東洋経済が選ぶ「年末年始に読みたい」、学校教育関係者にお薦めの本10選 2023年を振り返り、2024年に備える1冊がここに

「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を目指して(著:奈須正裕ほか)
2023年5月、新型コロナウイルスが5類感染症に移行されて以降、学校にも徐々に日常の生活が戻ってきた。
コロナ禍では、新学習指導要領による教育改革やGIGAスクール構想で整備された端末の活用が思うように進まないことも多くあったが、学習指導要領に基づく児童生徒の資質・能力の育成に向けた「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現に向けたさまざまな実践が現場に広がってきている。
そんな中、『「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を目指して』(著:奈須正裕、大豆生田啓友、加藤幸次、松村暢隆、浅野大介、堀田龍也、荒瀬克己ほか/北大路書房)は11月に刊行された。中央教育審議会をはじめ、昨今の教育改革のど真ん中に位置するメンバーを中心に書き上げられた1冊だ。
すべての子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実とは……。本書ではこの問いに迫るために、現状において考えうる多様な回答を理論と実践の両側面から検討している。「一人ひとりの子どもを主語にする学校教育」の実現に向けて、いま何ができるのか。その手がかりがここにあるのではないだろうか。
学びにくさのある子への読み書き支援(著:井上賞子)
個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が、ますます重要になっている背景として多様な子どもたちが増えていることが挙げられる。
発達障害のある子どもや不登校の子ども、海外にルーツを持つ子ども、特異な才能のある子どもなど、子どもたちの個性や特性に合わせた学び方、また学びを選択できる環境の整備が求められるようになっている。
『学びにくさのある子への読み書き支援—いま目の前にいる子の「わかった!」を目指して』(著:井上賞子/学研プラス)では、通常の指導では学びにくい子たちが「この方法ならできる」という手立てを見つけ、自力で「学びきった」体験を重ねるための読み・書きやコミュニケーションに関する支援、指導のコツが、豊富な実践事例を通して具体的にわかるようになっている。
著者の井上賞子氏は、いち早くICTを活用した特別支援教育を実践してきた島根県安来市立荒島小学校の教員だ。児童生徒の学びや生活をテクノロジーで支援する東京大学先端科学技術研究センターとソフトバンクによる実践研究プロジェクト「魔法のプロジェクト」でも多数の優れた実践研究を重ね、マスターティーチャーにも認定されている。
ここでは、教師の「方法の選択肢」を広げることも狙っている。すべての学校が学び方の選択に対して柔軟に対応できるようになっていくことが望まれる中で、子どもの学びにとって必要なら、ICTも、アナログ教材も、どちらもどんどん使う!のが本書の目指すところだ。
DCD 発達性協調運動障害 不器用すぎる子どもを支えるヒント(著:古荘純一)
学習面や行動面に困難さがあるなど、発達障害の可能性のある小・中学生は8.8%、11人に1人程度在籍している(文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」)。
そうした発達障害の1つである「発達性協調運動障害(以下、DCD)」をご存じだろうか。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などに比べて認知度が低く、多くが見過ごされているという。