日本の教育格差 橘木俊詔著

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大卒格差の理由を本書は「大学名による採用格差」と「昇進などにおいても、名門大学と非名門大学の格差」が存在すると説明している。また「大学定員が増加し、18歳人口が減少した」ことによって、入学困難大学・学部と、実質的に無試験で入学できる大学・学部が存在していると指摘している。大卒格差の原因は、大学そのものの二極化を反映しているわけだ。

家庭の経済力と子どもの進学についても細かく論じている。「家計所得と進学」「親の学歴と職業(階層)」「親の所得と学力(学業成績)」の分析はわかりやすい。いい(裕福な)家庭の子どもは学力と進学率が高い。貧しい家庭は低い。また母子家庭の平均年収は200万円以下。国立大学の学費ですら年50万円はかかるから、母子家庭の子どもの多くは高卒の学歴しか持てない。

ここまで読むと「仕方ないことだが、みんなわかっていること」と思うかもしれない。しかしもっと読み進めなくては本書の眼目はわからない。

多くの先進国は教育に国費を使い、授業料無料の国もある。生徒・学生の負担は小さいし、奨学金制度も充実している。つまり貧しい家庭に育っても、高い学歴を手に入れることができるのだ。

日本は大学などの高等教育に対する公費負担が非常に少なく、家計に負担を強いている。もちろん授業料免除や奨学金(給付ではなく有利子貸与が主流)もあるが、大学進学後に申請や決定がなされるので、低所得家庭の子どもは早い段階であきらめていると推計できる。

言い換えると、教育制度の整った国では人が育つことができ、国家の人材力が上がる。日本では教育制度に欠陥があるので、構造的に人材力は低下する構造になっている。

子どもたちの進路が時代にマッチしていないという指摘は新鮮だ。雇用環境が良かった時代には、高卒、大卒のいずれでも、いったん採用してからOJTによって一人前に育てるのが日本流だった。しかし企業の人材余力は乏しくなり、新卒でも技術や技能を持つ人間を採用したいと考える企業が増えている。

ところが日本では必要とされている職業教育を受ける子どもは減っている。まず高校を見てみよう。

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