亀山ブランドの“終焉”、液晶のシャープに迫る危機感
強気予想に懐疑的な声
同時に発表した今12年3月期の業績予想は売上高3兆0500億円と1%増収、営業利益は970億円の23%増益と強気だ。「携帯端末向け液晶への転換で業績は大幅改善する」と片山社長は強調する。自信の裏側には、結び付きを強める米アップルの存在があるだろう。今期後半に立ち上がる亀山第1工場の液晶新設備では「アイフォーン」、亀山第2工場では「アイパッド」が主要な搭載機種となる。
ただ、市場関係者からはこの起死回生策に早くも懐疑的な声が出ている。「堺工場の巨大な生産能力は60インチ以上の大型テレビだけで埋め切ることは当面できない」と、JPモルガン証券の和泉美治アナリストは指摘する。
SMBC日興証券の三浦和晴アナリストも、「携帯端末向け液晶の成長力は大きいが、シャープの優位はせいぜい3年程度」と疑問を呈する。年間販売1兆円の同社液晶事業のうち、テレビ用などの大型液晶は6割を占める屋台骨。他の用途で新たに補完するといっても、ハードルは高い。
“ポスト液晶”育たず
さらに深刻なのは“ポスト液晶”を見据えて種をまいた新規事業が、現状はいずれも開花していないことだ。
たとえば太陽電池。4年前まで太陽電池セル生産量で世界首位に君臨していたが、その順位は年々低下し、10年は第8位に甘んじた(米PVニュース調べ)。世界需要は拡大しているが、中国メーカーの急速な生産拡張で価格競争が激化。円高も響き直近の11年1~3月期の太陽電池事業は赤字計上を余儀なくされた。