ブランコがこげない、すべり台を横向きにすべる、シャボン玉を作れない、キックバイクをこげずに倒れるなど、「それくらいよくあること」「まだ筋肉や体幹がしっかりしていないから」と見過ごされることも多いDCD。

DCDは「発達性協調運動障害」のことで、発達障害の1つのタイプです。行動や運動の時にぎこちなさが見られたり、手先が不器用な子どもに対して「運動オンチ」「運動神経が悪い」「こういう子は昔からいたから」と思っている人にとっては、単に手先が不器用なだけでそれほど困っているようには見えないのかもしれません。

しかし、協調運動に障害があると、体育で行うなわとび、ボール投げ、水泳はもちろんのこと、字を書く、体を洗う、ボタンを留める、などの日常動作すべてにおいて不器用なことで不都合が起こってきます。

ここでいう不器用さとは、動作に時間がかかる、あるいは不正確である、ということです。例えば、黒板の字をノー トに書き写そうとしたら、時間がかかって先生のペースに追いつかない、急いで書けば、汚い字になり不正確で読み返してもわからない、板書ができないということになります。

着替えなどの準備に極端に時間がかかって集団行動に支障がでることもあります。答えがわかっているのに文字を書くことに時間がかかりテストの点数が悪い、大人になると仕事の手順が悪いと批判されるなど、本人の運動能力の困難が、日常生活活動、学業・職業活動や余暇活動などに重大かつ持続的な制限を引き起こします。

このように、個性の範囲を超えて、周囲からの配慮が必要なほど、動作の不器用さが目立つのがDCDの診断のポイントとなります。

小学校に上がってぶつかった問題とは

本書に登場する主人公のウノくんも、まさに小さい頃から体の使い方が不器用でした。お母さんも違和感を感じていましたが、乳幼児健診で指摘されたこともなく、夫やママ友に相談しても「気にしすぎ」「まだ小さいから大丈夫」という反応がほとんど。かといって病院に行く勇気もなく、不安を抱えたまま小学校に入学することになります。

運動オンチとDCDは何が違うのか

字がうまく書けない、外遊びが苦手、休み時間や放課後に周りの友だちと遊ぶことにも支障が出てくるようになります。学校生活にすっかり疲れ果ててしまったお母さんですが、ウノくんが4年生の時にDCDという言葉に遭遇します。

DCDの有病率についてWHOの診断概念では、5〜11歳の子どもの5〜6%だといわれ、最大10%の子どもにDCDの可能性があり学業や社会的機能に影響を与えかねない可能性を指摘しています。ADHDやASD、LDなどほかの発達障害と合併することが多いとされ、併存した症状で気づかれることがあります。

そのような場合は、残念ながら、ほかの発達障害への対応が優先されてしまいがちです。しかし、運動機能の不具合は70%以上の割合で青年期以降も持続するとされているため、発達障害の子どもには運動機能の評価も合わせて行う必要があります。

幼児期には滑舌が悪い、姿勢を保てない、食べ物の飲み込みがうまくいかない、など一見運動とは関係ない症状が見られることもあります。歩行がぎこちない、顔をうまく洗ったり拭いたりできない、ブランコや滑り台で遊べない、お遊戯ができない、といった困りごとから気づかれるケースもあります。

学童期には、靴ひもが結べない、着替えや身支度に時間がかかる、ボタンが留められないなどの生活習慣の問題、球技が苦手、泳げない、なわとびができないなど体育の苦手さ、そして、文字がうまく書けない、楽器の演奏が苦手、作図や筆算、工作など、すべての授業の教科に不器用さが見られることもあります。

DCDとわかってから学校が楽しくなった理由

ウノくん親子は、DCDという診断が下りて、生活が一変していきます。

このあと、お母さんはウノくんが暮らしやすくなるにはどうしたらいいか、アプローチを変えました。理解のある学校の先生と出会い、授業や行事への向き合い方だけではなくクラスにおけるウノくんの様子も変わっていきます。

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繰り返しになりますがDCDは、発達障害の1タイプで、育て方の問題や本人の努力不足ではありません。学校関係者にも、発達障害であることを明確に伝えましょう。「診断がついたところで、治療法はない」と悲観してしまうかもしれませんが、学校では合理的配慮を求めることができます。

配慮や支援を受けられれば、子どもたちの生活の質やものごとへの意欲は変わっていきます。また合併しやすい不安や不眠に対しては、医療的な支援を受けることができます。学校の先生の理解も対応もさまざまです。担任に相談しても変化がないときは、学年主任や、養護教諭、そして副校長、校長など、2〜3名に相談をしてみましょう。頭ごなしの相談ではなくステップを踏むことで新たな展開が開けるかもしれません。

学校の先生や、親戚を含めた家族の人の中には、自分の経験を尊重し、他者の意見や書籍からの情報をさほど尊重しない人もいます。できないのは甘えだ、などと「根拠のない精神論」を唱えがちです。そのような人に振り回されないことです。 子どもたちにも、文章よりも漫画や動画を使って伝えると、また違った反応があるかもしれません。DCDの子どもを支援するには医学的な知識に基づいて、本人の困りごとを理解し、対応することが必要です。

(画像:すべて合同出版提供)