1つは生物としての弱さ。体と脳が育つ大事な幼少期から、生活習慣が乱れて、良質な睡眠や食事が取れていないことで基盤ができていない。生活リズムが整わないと、こころをコントロールする脳の前頭前野がしっかりと育たず、友達のちょっとした言葉に傷ついてしまうのです。
もう1つが、親の過干渉があるとのんのん先生。確かに、親子の関わり方は、不登校の原因に挙がっています。とくに不登校になると、昼夜逆転など生活の乱れが見られるケースも多いのですが、この状況を悪化させないためには、親子の信頼関係が欠かせないとのんのん先生。しかし、親だって壁にぶつかる子どもにどんな言葉をかけたらいいのか、習っていないからわかりません。
私も子育てに悩んだ経験があり、コーチングや心理学、脳科学を学びましたが、よかれと思って逆のことをしていたことに気づきました。そんな経験からも、子どもを導く役割を担う親も先生も、関わり方を学ぶ必要があると感じています。のんのん先生も、心理学と脳科学、栄養学を取り入れた不登校の親向け講座を開いていますが、親の関わり方が変わると子どもは変わっていくそうです。
つまり、子育てや教育に関わる人が、常識だと思っていることをアップデートしていくことが、問題解決には欠かせないのです。
本丸は教育システムの見直し
そのうえで、本丸が教育システムの見直しです。ここまで、不登校の現状と、現場の取り組み、学校外でこの問題に向き合う人たちのことを紹介してきましたが、今回取材した先生の多くが、不登校の児童生徒が増えている理由として、「学校のこうあるべきという枠からはみ出る子どもたちを異質と捉える大人の同調圧力が子どもたちを追い詰めているのではないか」「この数字は、現状の学校システムが時代に合わなくなっていることの表れだ」という意見が相次いだのが印象的でした。
学習学の提唱者・本間正人氏は、「不登校という言葉は子どもたちの人権を蔑ろにしているのではないか。在宅選択・登校選択の自由という言葉に置き換えてはどうか」と提言します。確かに、「不登校」という言葉は登校を前提としたネガティブな言葉ですが、言葉を変えることで物事の捉え方が変わります。「不登校特例校」が「学びの多様化学校」と名称変更されたのと同様に、この名称も考え直す必要がありそうです。皆さんはどう思いますか? 最後に、元麹町中、現横浜創英中学・高等学校校長工藤勇一氏の言葉を紹介しましょう。
「何十年も前から国をあげて、教育委員会、学校が改善のための努力をしているにもかかわらず、ますます悪化していく一方なのは、そもそも日本の学校の教育システムが合っていないからです。子どもたち一人ひとりが主体的に学び方を選べる教育システムに転換しなければなりません」
これまで、だましだまし続けてきた学校というシステムが軋み始め、限界に近づいてきています。教育相談体制などの対症療法も必要ですが、教育関係者だけでなく、保護者や当事者である子どもも一体となって、教育を再構築していくときに来ているのではないでしょうか。
(注記のない写真:beauty-box / PIXTA)
執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら