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「これはクーデターではない」共産党要人の発言 佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿㉛

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筆者はロシア共産党中央委員会をそれまでに10回以上訪れたことがあるが、通用門から入るのは初めてだった。通用門とはいってもかなり立派な扉が付いている。扉を開けると自動小銃を持った民警が立っていた。レオーノフ補佐官が特別通行許可書を示すと、民警は筆者の外交官身分証と照合せずに通してくれた。民警の横にエレベーターが1台ある。

外国人の非公式面会は著者が初めて

「このエレベーターはイリイン第2書記の執務室に直結しています。公式の受付を通さずにイリイン氏と会うことができます」

「公式の面会記録に残らないということですか」と筆者は尋ねた。

「そういうことです。この入り口を使ってイリイン氏の執務室に入る外国人は、私が知る限りあなたが初めてです」

イリイン氏を含む共産党高官の執務室は、3つの部屋から構成されている。まず事務室があり、補佐官や秘書、タイピスト、電話交換手ら数人が勤務している。扉を開けて次の部屋に入ると、20人くらいで会議ができる大きな長テーブルがある。それとソファセット、さらに部屋の隅に大きな執務机がある。

執務机の左側には脇机があり、電話機が10台くらい並んでいる。クレムリンと直接つながる特別回線1、共産党中央委員や閣僚、国会議員ら党・政府・議会関係者とつながる特別回線2がある。さらに軍やKGB(ソ連国家保安委員会)との専用回線、市外通話が可能な電話、市内電話、内線などだ。電話機の数を見るとその人物がどれくらいの地位にあるかがわかる。その横にソ連国旗が掲げられている。要人は通常、この部屋で仕事をする。

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