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「非常事態宣言は必要だった」と第2書記は言った 佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿㉝

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イリイン・ロシア共産党第2書記は筆者の目を見つめてこう言った。

「佐藤さん、今回の非常事態宣言は絶対に必要だった。ゴルバチョフ大統領の下で事態が推移していたならば、今秋の収穫を正常に行うことができず国民を飢えさせることになり、外国の援助に頼らないと国民の腹を満たせない事態になってしまう」

「事態はそこまで深刻なのか」と筆者は尋ねた。

「十分深刻だ。このままゴルバチョフが大統領の座に居続ければ、ソ連は外国に依存する三等国に転落してしまう。ゴルバチョフ政権の下では、国家の内乱と分裂は不可避だ。今次事態はクーデターではない。国家非常事態委員会のメンバーは全員、ゴルバチョフ政権内部の人間だ。ペレストロイカの基本方針を支持している。外部からの政権奪取ではない。ヤゾフ国防相、クリュチコフKGB(国家保安委員会)議長たちも自らの職務を忠実に遂行しているだけで、決して権力の亡者ではない」

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