大震災受け物流分散化に動く流通企業、調達力を求め業界再編の加速も
PBの在庫が強みに 物流の分散が加速
ローソンやファミリーマートも本部や他地区から社員を派遣し、仮設店舗の設置や可動式店舗を出店するなど、営業正常化に向けさまざまな手を尽くし成果を上げている。だが、「GMSなどのスーパーをグループに持つコンビニと、そうでないコンビニとで調達の差が大きく出ている」と、SMBCフレンド調査センターの田中俊主任研究員は、商品供給力の差を指摘する。
実際、「セブン−イレブンは飲み物の品ぞろえが他のコンビニより多く、食品や雑貨の品ぞろえも幅広い。市民の信頼性が高まっている」と南相馬市のある市議会議員は言う。セブン−イレブンの3月の既存店売上高が前年同月比109・5%と、競合2社に比べ、2~4ポイント上回っている点にもそれは表れている。
コンビニのほかにイトーヨーカ堂などスーパー業態をグループに持つセブン&アイ・ホールディングスは、メーカーとの取引量が圧倒的。メーカーには重要な取引先と認識され、仕入れがしやすい。同様に、イオングループ傘下で業界5位にとどまるミニストップも、グループ調達力を武器に「震災直後の商品調達力は上位コンビニを凌駕していた」(田中主任研究員)という。
震災後の復興を後押しした大手流通の強みは調達力だけではない。プライベートブランド(PB)の貢献も大きかった。メーカーブランド(NB)に比べ低価格であることをウリに急拡大したPBは、一般的に小売り側の全量買い取り品だ。そのため賞味期限が比較的長い加工食品を中心に、各地の物流施設に在庫として備蓄がある。
一時的に食品メーカーからの供給が滞ってもPBがあるため店頭への商品供給が払底することがなくなる。また、消費期限の短い牛乳や豆腐などでもPBの強みが生かされた。イオンでは、北海道や熊本県の地域PBである「トップバリュ」の牛乳やヨーグルトを被災店舗に回すことで、品切れを回避できたという。