時間確保につながった例も、GIGA構想で「ICT活用」進んだ自治体や学校の特徴 「社会経済的背景の違いによる差」の縮小も課題
ICT活用促進は「働き方改革」との連動が重要といえる訳
──ICT教育活用を通じて公正で質の高い教育を実現するために、教育現場で大切な工夫は何でしょうか。
ICTを活用した公正で質の高い教育とは、簡単に言えば、学習指導要領にも明記された「持続可能な社会の創り手」になるための学びも促す教育。同プロジェクト研究の観察調査の結果は、子どもたちがICTを活用して課題解決学習を経験するときに理論や概念も学び、それらが活動と相互作用するような授業づくりが重要だと示しています。
そのためには、先生自身も主体的・対話的で深い学びが必要です。実際、教員研修を従来の講義形式から端末で学ぶ形式にするほか、学び合いの文化醸成や教職員間の関係性の質の向上などに取り組む自治体もあります。
また、ICT活用が本格的に進む前の21年度前半の政令指定都市調査では、社会経済的に不利な子どもたちは、他者の考えを積極的に聞くことや対話的な授業へのコミットが難しい傾向にありました。ICTはそうした子どもたちが授業に参加しやすくなるための道具になる可能性が見えてきていますが、それとともに教員は、そうした子どもたちに追加支援をしながら、クラス全員が対話に参加できるような学級経営の工夫も求められるでしょう。
ただ、社会経済的に不利な子どもたちの支援をするには、時間の確保が必要です。だからこそ重要なのは、働き方改革と連動して進めること。働き方改革がないままICT活用を進めて教員が忙しくなるのは避けるべきです。
──学校でのICT活用において、国や教育委員会に求められることは何でしょうか。
資源配分と組織マネジメントの工夫が必要です。ICT支援員やキーパーソン、教員の働き方改革に関連するところはこれまで述べてきたとおりですが、例えば全国調査からは、住民の大卒者割合の高い市区町村のほうが有償のICTツールの導入が進んでいる傾向も見られました。これは財政の差などと関係があると考えられ、何らかの教育機会の差が生じている可能性があります。こうした市区町村の社会経済的背景による教育機会の不平等の縮小は、市区町村や民間の努力で担うには限界があり、国による支援拡充の検討が求められています。
(文:吉田渓、注記のない写真:Fast&Slow/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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