時間確保につながった例も、GIGA構想で「ICT活用」進んだ自治体や学校の特徴 「社会経済的背景の違いによる差」の縮小も課題
2020年度の全国調査では、学校単位での社会経済的背景の違いによる差はあまり見られず、市区町村間の差が見られました。社会経済的に不利な市区町村※1は、有利な市区町村に比べ、ICT活用の広がりが部分的に滞っていたのです。
※1 「就学援助利用者割合が高い、または住民の大卒割合が低い」ことを社会的経済的に不利であると定義
しかし、1人1台端末の整備が進んだ21年度以降は、社会的経済的背景による端末活用の差が縮小しました。とくに協働的な学びの促進において、就学援助利用者割合による差が縮小しています。これはGIGAスクール構想の成果といえるでしょう。
──ICT活用を促進するカギは明らかになりましたか。
20年度、21年度の全国調査からは、「社会経済的に困難な家庭環境にある児童生徒には、教員が授業内でより多くの時間を使ってでも丁寧に教える」といった公正さを校長が重視する学校ほど、ICTを積極的に活用している傾向が見られました。ただ、学校の実情はさまざまです。各学校で、異なる背景を持つ子どもたちにどう支援することが公正か、そのためにICTをどう役立てられるかを話し合いながら活用を進めることが重要ではないかと思います。
また、やはりキーパーソンがいるとICT活用が進むことも明らかになりました。とくに小学校では「プログラミング的思考を通じた情報活用能力の育成」、中学校では「問題発見・解決能力の育成」などにおいてキーパーソンがいる学校ではよりICTが活用されています。
キーパーソンは主に、校内での技術的支援や教員への心理的支援のほか、校内・校外のネットワークやプラットフォームの整備などの役割を果たしていることも見えてきました。キーパーソンが動きやすい学校では、「教育委員会や校長が環境づくりや支援体制を整えている」「キーパーソンが複数いる」といったことも聞き取り調査からわかっています。キーパーソンが複数いるとお互いに相談しやすいでしょうし、それぞれの人間関係を通じて周りを巻き込みやすくなり、活用が進みやすいのかもしれません。リーダーシップを分散させる体制づくりはポイントになりそうです。
──ICT支援員の配置や役割についてはいかがでしょうか。
22年度の調査では、住民の大卒者割合が低い市区町村ではICT支援員を配置する割合が比較的低く、ICT支援員の人材が不足している可能性が示唆されました。こうした地域には、ICT支援員の配置支援が必要だと思います。
一方で、小中学校とも、ICT支援員が「操作支援」にとどまらず「授業づくり支援」をしている学校では、学習指導におけるICT活用が進んでいました。とくにICT支援員の在校頻度が高い小学校では授業づくり支援が行われている傾向にあります。中学校では、ICT支援員が頻繁に授業を見学する学校ほど、アプリや教材の提案、他校での活用事例の収集、授業改善の提案といった授業づくり支援を行っていました。ICT活用のカギとなる授業づくり支援を促すには、ICT支援員と学校との信頼関係の構築も大切だといえます。