乳がん「男性は患者の1%」でも知るべき3つの事情 親から子へ50%遺伝、男性もリスク12~80倍に
次に、②「BRCA遺伝子の変異」は、俳優のアンジェリーナ・ジョリー氏が予防的に乳腺や卵巣を取り除く手術を受けたことで、広く人々に知られるようになった。
がん細胞は1つの遺伝子変異で生じることはなく、複数の遺伝子変異の結果として生じる。とくに高い発がんリスクを招く遺伝子を「がん遺伝子」と呼ぶ。
乳がんでは、「BRCA1」や「BRCA2」と呼ばれるがん遺伝子の変異が有名だ。BRCA遺伝子は誰にでもあり、さまざまな原因で傷ついたDNA(遺伝情報を担う物質)を修復し、細胞のがん化を抑える働きをしている。
ちなみに体のいわば“設計図”であるDNAは、紫外線や放射線、化学物質などの刺激によって、日常的に傷つけられている。それでも、人体にBRCA遺伝子などの修復メカニズムが備わっているので、がん化が抑えられている。
ところがBRCA遺伝子に生来の変異があり、働きが失われている人がいる。その場合、DNAの正常な修復が妨げられ、乳がんや卵巣がん、さらには胃がんや高悪性度前立腺がん、膵がんにもなりやすいとされる。
これを示唆するのが、③乳がんの家族歴があるケースだ。
親から子へ50%遺伝、男性も乳がんリスク12~80倍に
生殖細胞のBRCA遺伝子に病的な変異が起きている場合は、BRCA1またはBRCA2遺伝子の変異が、性別を問わず親から子へ2分の1(50%)の確率で受け継がれる(遺伝性乳がん卵巣がん症候群、HBOC)。
アンジェリーナ・ジョリー氏も、母が乳がんであり、検査を受けたところ自身もBRCA遺伝子変異を持っていて、高い確率で難治性の乳がんを発病することが予測された。
この病的な変異が男性に遺伝した場合は、男性も乳がんが起きやすくなる。BRCA1変異があれば、男性でも乳がんの生涯リスクは1.2%、BRCA2変異なら7〜8%に上る。両遺伝子に変異のない人なら生涯リスクは0.1%なので、実に最大80倍にもなる。
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