乳がん「男性は患者の1%」でも知るべき3つの事情 親から子へ50%遺伝、男性もリスク12~80倍に

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この点、男性の乳腺は、脂肪が多い女性の乳房と異なり、隣接する組織と距離が近い。これが1つめの「男性のほうが怖い」点だ。男性の場合、乳がんが見つかったときにはすでに進行している場合が多いのだ。

男性の乳がんの最も一般的な症状は、

・乳房のしこりや腫れ
・乳房の発赤や皮膚のはれ
・乳房の皮膚の炎症やくぼみ
・乳頭からの分泌物
・乳頭の引きつれや乳頭部の痛み

といったものだ。もっとも、これらの症状は、がんではないほかの疾患でも起こりうる。ちょっとした症状があっても必ずしもがんとは限らないので、怖がりすぎることはない。それでも軽く見ずに、乳房や乳頭に何らかの症状や変化があれば、医師の診察を受けよう。

男性乳がんは珍しいため、検診が確立していない

2つめの「怖い」点は、女性と異なり、男性の乳がんは頻度が低いので「乳がん検診」が確立されていないことだ。

多くの男性乳がん患者が、しこりを触って気づいたり、上記の異常がなかなか収まらない場合に、乳腺外科を受診し、検査を受けてがんが判明する。女性は自治体の負担で2年に1回乳がん検診が行われるなど、早期発見のチャンスが多いが、男性はそうはいかないのだ。

検査では、女性なら乳房を板で挟んでなるべく平たくしてX線写真を撮る「マンモグラフィー」という検査が行われる。男性では乳房らしい乳房がないのでこれは不可能だ。疑わしい場合は、超音波やCT、MRIなどの画像検査や、超音波で確認しながら病巣を針で刺して組織を採取する「生検」、病理医が顕微鏡でがん細胞か否か判断する「病理検査」などから、総合的に判定する。

さて、3つめの「男性のほうが怖い」点は、男性乳がんを発病しやすいリスク因子の中で確認していこう。

① 加齢
② BRCA遺伝子に変異がある
③ 乳がんの家族歴がある
④ 胸部への放射線治療
⑤ 肝臓病
⑥ 肥満

以下、1つずつ見ていく。

まずは、①加齢だ。

乳がんに限らず、がんのリスクは年齢とともに増加し、ほとんどのがんは50歳以降に発見される。歳を重ねるうちに、細胞の遺伝子変異が蓄積することと、がん細胞を殺す免疫の働きが低下するためと考えられる。男性の乳がんも例外でなく、50歳以上になってくるとリスクが高まる。

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