井上:大企業も、ベンチャーの技術を活用してグローバル市場を開拓していく気概が必要ですね。ところで城倉さんは和氣さんと同じようなイグジット戦略を思い描いておられるのでしょうか。
城倉:当初、IPO(新規株式公開)するという計画があったのですが、医療機器のスタートアップは容易ではありません。特にこういった体に植え込むような機器を作っている医療機器のスタートアップは、世界的に見るとだいたい7割以上がM&Aでイグジットしています。
IPOはその準備だけでもお金がかかります。CFO(最高財務責任者)を雇い、社内体制を整えていかなければならないので大変なんです。
一方、M&Aというイグジットであれば、上場の準備に資金やリソースをかける必要がなくなる。M&Aをゴールにすると、技術や製品の開発に注力できるようになり、相手先との交渉もやりやすくなる。M&Aというイグジットに転換することで、ロジカルに物事が進められるようになりました。
井上:ちなみに、もしIPOを目指していた場合は、ビジネスモデルは、どのようになっていたんでしょうか。
大企業のM&Aなら普及が加速する
城倉:私が最初に構想したときのビジネスモデルは、国内であっても海外であっても、大手企業をパートナーにして販売してもらうというビジネスモデルだったんです。製造は自分たちで担うという製造販売モデルです。
和氣:確かに、海外のスタートアップの中には、自分たちで営業組織を抱えて実績を出し、企業価値を何千億と高めてから売却した事例もあります。
しかし、われわれの場合、そこに至るまでにさらに10年かかると思うんですね。医療機器の場合、浸透させるためには臨床試験データ等のエビデンスが必要になる。それにはお金も時間もかかる。10年の歳月をかけてバリュエーションを高めなければなりません。
それよりも、薬事承認後の段階で大企業にM&Aしてもらって、普及を加速させた方が社会的にもいいのではないかと思いました。
井上:確かにIPOではなくM&Aとなると、上場準備するための管理体制を整える必要がなくなりますね。技術開発に専念しやすくなる。
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