井上:そうすると、もはや靭帯の医療機器メーカーにとどまらないですね。
城倉:心臓バイパス術というのは、脚やお腹の血管を取ってきてそれを治療用の血管として植え込みます。火傷の場合も、別の部分から取ってきた自分の皮膚を使って治療します。
自分の健康な組織を取ってくる再建治療は、日本だけでも年間約10万件以上、行われています。われわれの技術を使えば、患者さんと医師の負担を軽減できるようになります。
井上:岩﨑教授の技術をもとに創業し、本格的に活動されてから、和氣さんを迎えてどのように経営体制を充実させたのでしょうか。
城倉:2021年までは私が経営者として1人でやってきましたが、膝前十字靭帯の治験の準備やアメリカFDA(食品医薬品局)との相談など、仕事量がかなり増えてきました。これを1人でこなすと、投資家との交渉、新しい製品の開発、ならびに海外展開まで手が回らない。
そんなときに海外経験が豊かでMBAを取得した和氣がメンバーに加わってくれました。その仕事ぶりを見て代表権を持つ社長に就任してもらい、投資家との交渉を任せることにしました。
医療機器はなぜ輸入品ばかりなのか
井上:和氣さんは、どのような経緯でスタートアップ企業に参加されたのでしょうか。
和氣:過去20年近く外資系の医療機器メーカーでマーケティング・マネジメントをやっていました。私が担当していたのは薬剤溶出型ステントという、心筋梗塞を治療する医療機器でした。一度、患者さんの体の中に植え込むと、死ぬまでずっと埋め込まれている機器なのですが、市場シェアの9割をアメリカの企業が占めていたんですね。
日本には素晴らしいテクノロジーがあるのに、なぜ体に植え込む治療機器に関してはものすごく弱いのか。アメリカとヨーロッパからの輸入品ばかりなのはなぜか。その原因について疑問を持ち、早稲田大学のビジネススクールに入りました。
自分の中で「これが原因なんじゃないか」という仮説は導けたのですが、本当に正しい仮説なのかがわからない。自分が実践して確かめたいと思ったんです。
もともと岩﨑先生が体に植え込む治療機器を開発しているのは知っていたので社長であった城倉を紹介してもらい、CoreTissue BioEngineeringのメンバーに加わりました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら