「iPodの父」が語るジョブズから教わった教訓 ものづくりの現場で意外とスルーされる「常識」

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本書のテーマは人間性だ。自らのキャリア、事業のアイデア、チームや会社、仕事以外の人生をどのようにつくっていくべきか、他者とどのようにかかわるべきか。そうした基本ルールは世界のどこであろうと変わらない。こうしたさまざまな要素を整えずに、価値あるモノを生み出すことはできない。

トニー・ファデル
Tony Fadell(トニー・ファデル)/1969年生まれ。スタートアップ企業ゼネラルマジックで30年にわたるシリコンバレーのキャリアをスタート。2001年iPodの開発責任者としてアップルに入社。2007年にiPod部門シニアバイスプレジデントに就任、また初代iPhoneのハードウェアと基本的ソフトウェアの開発チームを率いる。2010年アップル退社後ネスト社を立ち上げ、2014年にグーグルが32億ドルで同社を買収。2016年にネスト退社後、現在は投資・アドバイザリー会社ビルド・コレクティブを率い、約200のスタートアップ企業にコンサルティングとサポートを行っている。(写真:早川書房提供)

――本書を執筆した理由に「起業家に必要な常識が均等には行き渡っていないため」と書いていたが、具体的にどういうことか。

一番重要なのは、何をつくるかにかかわらず、まずは「人(利用者)」について考えることだ。誰のために、なぜつくるのか、解決すべき問題は何か。人がモノを買うのは、それが自分の抱える問題を解決し、満足させてくれるからだ。

だから技術について考える前に、人々がどんな問題を抱え、どうすれば満足するかを理解しなければならない。大方のテック企業の考え方とはまさに逆だ。もちろん技術も財務も重要ではあるが、詰まるところは「人」である、というのは忘れられがちだ。

ジョブズから「学んだこと」

――スティーブ・ジョブズ氏のアップル、ラリー・ペイジ氏率いるグーグル(現アルファベット)の両方で幹部を務めた経験も本書の読みどころのひとつだ。ジョブズ氏から学んだ最も重要な教訓は何か。

とにかく「ノー」と言い続けることだ。それによって「イエス」という言葉が本当に意味を持つようになる。社員を何かに集中させ、全員の意識を合わせるためには、ごく少数の「イエス」以外には「それはやらない」と言わなければならない。何でも「イエス」と言いたがるリーダーは多いが、それは何も重要ではないと言うのに等しい。

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