日経平均株価が本格反転するのはいつになるのか 低調な全体相場のストレスは個別株で発散へ?

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では、日本株もすぐに反発でいいのだろうか。例年、8月と9月は「低調な月」といわれる。事実、統計で見ても、日経平均の月間騰落率はこの2カ月が断トツでワーストを争っている。とくに8月は太平洋戦争終戦の月であり、お盆という先祖の霊に向き合うときで、厳粛にならざるをえない。

今回は12年前ほどではないにせよ、アメリカ国債の格下げというやはり予想外の材料で波乱のスタートとなった。だが、日本の投資家はある程度の調整は覚悟しているはずだ。それでも、上昇を期待する向きは「このモミ合いがいつまで続くのか、いつまで我慢すればいいのか」と迷っていることもまた事実だろう。

反転の起点になるのは「ジャクソンホール会議」?

その悩みを解決するのは、アメリカのワイオイミング州で開かれるジャクソンホール会議(24~26日)だろう。

7月の「中央銀行ウィーク」は終わったが、結局、次の9月以降の金融政策はすべて「データ次第」という課題を残した。そのデータの蓄積に、「言霊(ことだま)」として世界に力を与えるのがジャクソンホール会議ではないか。

呪術めいていると笑われそうだが、兜町では、真剣にこの会議での心理が世界の9月以降の金融政策を決めると見る向きが少なくない。やはりパウエルFRB議長の講演が大きく注目され、筆者もこの講演で相場の流れも変わるとみる。

もちろん、9月からの急騰を保証しているわけではなく、例年の相場サイクルのイメージからいっても、「本格的な2段目の上昇は10月から」とみるのが無難かもしれない。

その間、相場にたまったストレスはおそらく個別株に向うはずだ。日本の上場企業の2023年4~6月期の純利益は、8月4日時点で前年同月比約20%増となっている。

6月の日銀短観では大企業製造業の為替想定レートの平均は1ドル=131円61銭で、全産業でも132円43銭だった。現在の為替水準と比較すると、やはり円安効果は大きく、円安メリットが大きい企業ほど大きく買われるだろう。

もちろん、これからの金融政策はその都度「データ次第」で決まるので、ジャクソンホール会議までの経済指標には注目だ。もちろん、アメリカ以外の指標もしっかり見ておきたい。

筆者が直近で注目しているのは、9日に発表される国内の7月マネーストック、中国7月CPI(消費者物価指数)・PPI(生産者物価指数)、10日の7月国内企業物価指数、アメリカ7月CPI、11日の同7月PPI、同8月ミシガン大学消費者態度指数などだ。

このコラムで毎回訴えていることだが、30年の眠りから覚めた今回の大相場は始まったばかりで、1年や2年では終わらない。焦らずにしっかり見極めて行動しよう。とにかく下げたら弱気にならず買えばいいと思っている。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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