新幹線方式「インド高速鉄道」はどこまで進んだ? 新たな目標決まり土地買収や土木工事が進捗
一方、ムンバイ側の始発・終着駅は在来線のターミナル駅であるチャトラパティ・シヴァージー駅に併設するのではなく、同駅から約10km北に離れたビジネス街のバーンドラ・クルラ・コンプレックスに地下駅を新設する。多くの国際企業がオフィスを構えるエリアであり、高速鉄道の駅を設置することで将来の発展性が期待できるほか、チャトラパティ・シヴァージー駅が世界遺産に登録されており再開発が容易ではない、新線を建設するには立地条件が良くないといった理由も考慮された。
なお、アーメダバード駅は始発・終着駅ではなく、アーメダバードから6km程度北に離れたサバルマティ駅が始発・終着駅となる。にもかかわらず「ムンバイ―アーメダバード間」と呼ばれているのは、サバルマティがアーメダバード都市圏に属しているからだ。つまり、「ムンバイ―アーメダバード間」とは、駅名ではなく都市名を指していることがわかる。
ムンバイ―アーメダバード間の高速鉄道計画は2015年12月の日印首脳会談で新幹線方式の導入に関する覚書が交わされ、2016年11月の首脳会議では年内に高速鉄道の設計業務を開始し、2023年の開業を目指すことが決まった。日本のJICA(国際協力機構)による詳細設計調査も始まった。JICAはJR東日本系の日本コンサルタンツ(JIC)などから構成される共同企業体とコンサルタント契約を12月に発注、建設に向けての動きが本格化した。そして、両国トップが出席した2017年9月の起工式に至る。
計画変更とコロナ禍で一時停滞
しかし、高速鉄道建設のための土地収用が進まず、起工式直前の土地収用率は、地主である農民たちの反対により全体の4割程度にとどまっていた。さらに、インド側から線路や駅の仕様について変更の要望が次々と出された。
当初は東海道新幹線のような盛り土を想定していた地域もあったが、用地買収が進まない、斜面を動物が通過するリスクがあるといった理由から、盛り土ではなくより狭いスペースで建設が可能な高架を走る区間が増えた。また、一部の駅では当初計画が白紙撤回され、練り直しになったほか、ホームドアも全駅に設置されることになった。そこへ2020年にはコロナ禍が拍車をかけた。インドに駐在していた日本人スタッフは帰国を余儀なくされ、事業は暗礁に乗り上げたかに見えた。
ただ、コロナ禍においてもオンライン会議などを活用して日印スタッフの協議は続いていた。関係者の話を総合すると、コロナ禍が収束に向かい始めた頃から事業が進展し始めたようだ。土地収用も動き出し、路線全体の7割を占めるクジャラート州における土地取得率は2021年に約95%に達した。同3割を占めるマハーラーシュトラ州内の土地取得率は2~3割程度にとどまっていたが、こちらも2022年以降急速に伸び、全体の土地取得率も100%に向かい始めた。
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