これだけ!OJT 中尾ゆうすけ著

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過去に1部上場企業の人事部門で活躍し、日本メンタルヘルス協会の公認カウンセラーである著者ならではの、コミュニケーションを重視したマネジメント術も参考になるはずだ。「報・連・相の徹底」「理解したかではなく、理解した内容を確認すること」「相談しやすい環境を作ること」「段階的に原理原則を指示さえすれば、1から10まで面倒をみる必要はない」など、当たり前のようでなかなかうまくいかない問題を取り上げ、解決のコツを提示してくれている。

中でもコピーをバンソコウで綴じた新入社員に上司があぜんとしてしまったというエピソードのくだりが印象的だ。

そんな摩訶不思議な社員に出くわしても、著者は部下を責めない。「この書類を両面印刷で、ホチキスで綴じて、50部を午後1時の会議に間に合うように会議室に持ってきてくれ」と具体的に指導したうえで、部下の方から足りない情報を確認してくるような習慣をつけさせることが大切だと説く。

そこまで面倒をみなければいけないのかとも思うだろうが、程度の差こそあれ”トンデモ新入社員”はどこの会社にもいるものだ。気が利かないとイライラしたり、何でもゆとり教育のせいにするのは時間のムダ。頭を切り替えるきっかけとしても本書はおすすめかもしれない。

大震災も起こり、今後ますます採用を絞る企業が増えるに違いない。せめて今いる人材の育成はコストと考えるべきではない。これ以上、教育機能不全ともいえる負の連鎖を放置せず、OJTを投資ととらえて取り組むべきだろう。

すばる舎リンケージ 1470円

(フリーライター:佐藤ちひろ=東洋経済HRオンライン)

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