理想の授業ができない、先生の心を折る「日本の教育」の悲しすぎる現実 自由度が低い、横並び意識が強い学校の弊害

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古内先生は、学校を飛び出し、みんなでつくっていく社会を目指して、「つみき」の活動を行っている
(写真:古内先生提供)

子どもを真ん中において学校と保護者が手を携えることから

どの先生も、子どもたちのためを思って活動をしています。こうしたそれぞれの先生の思いが、やがて管理型の学校教育という岩盤を突き崩し、子どもを真ん中に置いた学校教育が実現していくと信じたい。ただそれを妨げる、さまざまな課題があることも今回の取材でよくわかりました。

最後に、日本も批准している子どもの権利条約の4つの原則を紹介しましょう。

生命、生存および発達に対する権利
(命を守られ成長できること)

すべての子どもの命が守られ、持って生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障される。

子どもの意見の尊重
(意見を表明し参加できること)

子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、大人はその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮する。

子どもの最善の利益
(子どもにとって最もよいこと)

子どもに関することが決められ、行われるときは、「その子どもにとって最もよいことは何か」を第一に考える。

差別の禁止(差別のないこと)

すべての子どもは、子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障害、経済状況などどんな理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障される。

この4つの原則は、2023年4月に施行された「こども基本法」にも取り入れられています。

しかし、多くの先生はこの内容をちゃんと理解していないのではないかと宮澤先生は言います。「この条約の前提は、子どもは自分で意見を形成する能力があるという前提に立っている。つまり、子どもたちがその力を伸ばしていける引き出しを用意することが、教員の役割だ」という言葉が印象的でした。

今盛んに言われている探究的な学びは、指導者の力量が問われることもあり、横並び意識が強い日本では、結局型どおりの授業を行わざるをえないという状況があるというのもよくわかりました。でも、時代は大きく変わっていくのですから、学校教育の意味と目的を前提から考え直す時期に来ているのは確かでしょう。

けれども、それは学校だけで決めることではなく、そこに子どもを預けている親も一緒になって対話をしていくことが必要です。保護者は要望を出すだけではなく、トライ&エラーがあってもそれを寛容に受け止め一緒につくっていくくらいの気持ちがないと新しい教育への挑戦は先生もできませんね。

好き勝手に突進し、何か(誰か)にぶつかったら方向転換する「ルンバタイム」に興じる子どもたち。雑巾がけも楽しい体験になる
(写真:宮澤先生提供)

制度としては、学校運営委員会やコミュニティ・スクールなどがありますが、機能しているかというと怪しい。しかも、学校教育は、ある意味サービス業になってしまっているという指摘もありました。学校は保護者からクレームが出ないように守りの姿勢が強くなっているのだとしたら、お互いに信頼関係を築いていくことが、学校をよい場所にしていくためには欠かせないでしょう。

逆に言えば、子どもを真ん中にして子どもたちが幸せであるために何が大切なのかを対話し、協力し合えたら、学校という場所も変わっていくのではないでしょうか。

そのときに大切なのは、子どもを一人の対等な人間として尊重する、その意識を先生も親も持つこと。そして、子どもを育てる仲間として、お互いをリスペクトする関係づくりが、何よりまず必要なのではないか。そんな思いを抱いた取材となりました。

(注記のない写真:Ushico / PIXTA)

執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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