山下達郎、中田敦彦、鳥羽周作…失言する人の急所 “釈明"が“炎上"にすり替わる3つの危険なスイッチ

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山下さんは次に、「このたび、松尾氏がジャニー喜多川氏の性加害問題に関して、臆測に基づく一方的な批判をしたことが、契約終了の一因だったことは認めますが、それだけではありません。他にもいろいろあるのですが、今日この場では触れるのは差し控えたいと思います」などとコメントしました。松尾さんの主張を「契約終了の一因」として認めたことと、「他にもいろいろある」と語りながら、その詳細を明かさなかったことも何の問題もないでしょう。

一部で「言わないのはずるい」「逃げるのか」などの批判も見られますが、「これ以上やり取りを続けて泥仕合になるのを避ける」ためでもあり、炎上に向かう要素はありません。さらに山下さんは、「松尾さんの契約終了は世間の人々にとってどうでもいい話」であることに気づいていて、「ネットや週刊誌の最大の関心事は、私がジャニーズ事務所への忖度があって、今回の一件もそれに基づいて関与しているのでは、という根拠のない臆測」と言い切りました。

これが炎上に向かう1つ目のスイッチです。釈明をしたいときに求められるのは、最初から最後まで、できるだけ冷静な言動で振る舞うこと。つい感情的になりそうなときでも、発する言葉だけでも冷静なものでなければ、いつの間にか炎上に向かってしまう……というケースがよくあります。

その点、山下さんは「ネットや週刊誌」を悪いものと決めつけるように名指しし、「根拠のない臆測」と語るなど敵意がにじみ出ていました。ここまで冷静に話せていたのに、「感情的になって不満を漏らす」というスイッチを自ら押してしまったのです。

ビジネスパーソンが釈明を求められたときも、山下さんと似たケースが少なくありません。たとえば上司に対して、「最初は事実関係を中心に過不足なく冷静に話せていたものの、途中で感情的になって不満を漏らしてしまい、必要以上の叱責を招いてしまった」という話をしばしば聞きます。

感情的になるほど正当性を主張する

続いて山下さんは自らの正当性を訴えるような言葉を重ねました。

「性加害については、今回の一連の報道がなされる前は漠然とした噂でしかなく、私自身は1999年の裁判のことすらも聞かされていませんでした」
「それについて知っていることが何もない以上コメントを出しようがありません」
「私はいち作曲家、楽曲の提供者であります」
「ジャニーズ事務所の内部事情など全く与かり知らぬことですし、まして性加害の事実について知る術はありません」

また、この間に「性加害が本当にあったとすれば、それはもちろん許しがたいこと」「被害者の方々の苦しみを思えば、第三者委員会での事実関係の調査は必須」とコメントしていました。自分の正当性を主張することに時間を割き、性加害や被害者に関する言葉がわずかだったことが批判されていますが、これは1つ前のコメントで感情的になるスイッチを入れてしまったからではないでしょうか。

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