韓国紙、安倍演説を「自画自賛演説」と酷評 中国と韓国、「安倍演説」をどう報じたか

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中国は、日米同盟強化を批判することと、日本の集団的自衛権行使容認批判を分けているように見える。中国は日本の安倍政権に対しては「孤立化」という戦術を行ってきたが、この戦術は今後も不変のようだ。

今後は、安全保障法制に関する議論の行方や普天間米軍基地など沖縄の問題、戦後70年で新たに発表しようとしている「談話」の内容に中国は神経をとがらせるだろう。

今回の安倍訪米は日本にとって成功したと言え、「今後、日米同盟の強化を背景に中国を刺激しないか心配だ」(中国の日本研究者)という声も強まっている。

韓国メディアは「自画自賛演説」と論評

中国よりも安倍演説の内容に神経をとがらせてきたのは韓国だ。

韓国メディアは安倍演説に対し、前述したような言句をつかって安倍演説を批判している。「自画自賛演説」(『東亜日報』)、「慰安婦に言及なし」(『中央日報』)と報道し、国内の対日感情を刺激している。

韓国では「韓国に配慮してくれるかと思ったが、やっぱりなかった」(韓国の元国会議員)と落胆する声が多い。演説の内容は米国にとってはよかったが、韓国にとっては物足りなくとうてい満足できないというのが韓国政府や政界、メディアの大勢でもある。

韓国の全国紙『ハンギョレ』の吉倫亨(キル・ユンヒョン)東京特派員は「安倍首相が米国人の好みにぴったりと合う内容を発表し、多大な拍手を持って受け入れられた。だが、韓国人にとってはあまりにも物足りない」と韓国国内の気持ちを代弁する。同時に、今後の韓国外交の方向に不安が生じているとも指摘する。

「日本と米国の戦略的利害が、中国を牽制するという点で一致しているため、米国が韓国に対しては深い配慮を行う理由がなかったのだろう。今後、韓国政府が日本との関係改善を図るべきだが、その方法をどうするか、国内世論とどう向き合うかを考えると、韓国政府の悩みは深い」(吉特派員)。

吉特派員の言葉を借りるまでもなく、韓国の朴槿恵政権を取り巻く状況は非常に悪い。29日に行われた国会議員補欠選挙では4議席のうち3議席を獲得したものの、この成果は朴大統領の支持固めには結び付かない。

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