立憲民主が「行き倒れ危機」に追い込まれたワケ "泉降ろし"顕在化、政権奪取は「夢のまた夢」

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確かに、「自公政権打倒に向け、全小選挙区での候補者擁立を目指す」と威勢のいい維新は、ここにきて、馬場伸幸代表が野党候補一本化について「わが党は応えることはできない」と完全否定する一方、維新入党希望とも噂される松原氏らについて「どなたであっても選考はさせてもらう」と思わせぶりに語る。

すでに政界では「次期衆院選後の自公と維新・国民の大連立説さえ流れる中で、内紛ばかりが目立つ立憲が有権者から見放されるのは当然」との厳しい声が支配的。だからこそ馬場氏が「(立憲では)離党ドミノが起きる可能性が高い。そこはアグレッシブに仕掛けていかなければいけない」とすごみを利かせるのだ。

こうした状況について、立憲立て直しのキーパーソンとの声も多い野田佳彦元首相は「次の選挙で泉代表を続投させるような結果を出さなければ前進はできない。私はクーデターなどまったく考えていない」と泉体制支持を明言。そのうえで「多弱を喜ぶのは一強。大義を見失っちゃいけない」とくぎを刺す。

「日本の政治の劣化の象徴」

野田氏が否定する「泉降ろし」だが、現状を踏まえると「泉氏に代わるリーダーとして衆目が一致する議員はいない」のも事実。泉氏も6月26日に国会内で若者らとの意見交換会に参加し、「未来に向けて意見を聞き、党運営にもつなげていきたい」と笑顔で語るなど続投に意欲満々だ。

ただ、党内の多くの議員は「党内外の動きに忖度するような発言ばかり。党内に不安があふれる時こそ、もっと堂々として、リーダーシップを発揮してほしい」と首をかしげる。

永田町で政局秋の陣に絡めて早くも「9月29日臨時国会冒頭解散―10月22日投開票」説がまことしやかにささやかれているだけに「野党第一党の存在感の喪失は、日本の政治の劣化の象徴」(首相経験者)といわざるをえない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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