潜水艇行方不明、乗船するCEOが語っていたこと 多数の業界関係者が安全性を疑問視していた
同年、オーシャンゲートが受けた別の警告は、潜水艇業界の38人の専門家によるもので、全員が、海洋技術の普及、研究、指導を行う60年の歴史を持つ業界団体「海洋技術協会」の有人潜水艇委員会のメンバーだった。専門家たちはラッシュへの手紙の中で、タイタンの開発経緯や、タイタニック号の残骸へのミッション計画について、「一致した懸念」を抱いていると書いている。
書簡では、オーシャンゲートがタイタンを販売する際、同社はDNVと呼ばれるリスク評価機関から正式に認証を受ける予定がなかったにもかかわらず、同機関の安全基準を満たす、あるいはそれを超える潜水艇であると主張しており、これは「少なくとも誤解を招く」ものであったとしている。
専門機関による試験と認証を強く勧めた
有人潜水艇委員会のウィル・コーネン委員長は、20日のインタビューで、「分類のガイドラインに従わないという彼らの計画は、非常に危険であると考えられていた」と語った。
業界の専門家らは書簡の中で、オーシャンゲートは少なくとも、DNV、あるいは他の主要な認証会社の監視の下でプロトタイプを試験するべきだと述べている。
「これは追加の時間と費用を要求するかもしれないが、第三者による検証プロセスは、すべての潜水艇の乗員を保護する安全装置の重要な要素であるというのが、我々の一致した見解だ」と署名した専門家らは書いている。
コーネン委員長は書簡を読んだラッシュから電話があり、業界標準がイノベーションを阻害していると告げられたという。
同社は「なぜタイタンは分類されていないのか」と題した無署名の2019年のブログ記事でも、同様の主張を展開している。オーシャンゲートはこのブログの中で、同社のタイタンは非常に革新的であるため、通常の評価機関から認定を受けるとプロセスに何年もかかると主張。「実世界での試験に入る前に、すべての革新的な技術について外部の組織をスピードアップさせることは、迅速なイノベーションにとって禁じ手である」と同社は書いている。
2018年の書簡のもう1人の署名者であるバート・ケンパーはインタビューで、オーシャンゲートは沿岸警備隊の規則が適用されない国際水域に船を配備することで、アメリカの特定の規制を守る必要を回避していたと述べた。
「この手紙は基本的に、他の潜水艦がやっていること、特に旅客用のものと同じようにやってください、というものだった」と、潜水艦の設計に携わる法医学エンジニアのケンパーは語る。