レアメタル加工のフルヤ金属、積極増資でリサイクル事業を強化へ
イリジウムやルテニウムなど最も希少性の高いレアメタルに特化した工業用貴金属加工メーカー、フルヤ金属。目下、LED基盤のサファイア製造装置用イリジウムルツボ(物質の溶融や合成の際に使用する耐熱容器)が需要急増中だ。業績も�字回復している。そして、さらなる飛躍に向けて、第三者割当増資で70・8億円を調達した。この資金を好採算事業の設備増強などに重点投入する。
フルヤ金属はイリジウム製品で世界シェア約80%と、断トツの首位。ルテニウム製品でも世界3位に位置する。
イリジウムやルテニウムは融点が超高温なため、加工には高い技術が求められるが、同社は1981年に国内で初めてイリジウムルツボの開発に成功。以降もハードディスク用のルテニウムターゲット(高純度の板材)などを武器に、業績を拡大してきた。
そして、次なる成長へ積極策を打ち出した。今2月25日、国内トップ級の貴金属取扱量がある田中貴金属工業に対し、第三者割当増資を実施した。発行新株式数は141万6000株、発行価額の総額は70・8億円。この増資により、田中貴金属の持ち株比率は19.49%に上昇した(増資前は0%)。フルヤ金属は田中貴金属からの非常勤取締役の受け入れにも同意しており、今後は事業面で協業関係を構築していく。
同時に、資本関係のあった三菱商事に対しても、株式売買予約を締結した。フルヤ金属のオーナー一族が所有する当社株式の一部を三菱商事に譲渡するスキームで、行使期限は今6月30日。予約権がすべて行使されれば、三菱商事は持ち株比率19.99%(行使前は10.04%)と筆頭株主に浮上、田中貴金属が第2位株主となる。
提携で原料調達ルートを確保
今回の資本・業務提携によるフルヤ金属のメリットは、大きく2つ。
1つは原材料の調達力が増すことだ。昨今はスマートフォンなど情報機器の普及に伴い、工業用貴金属製品に対する需要が増えている。さらに、白色LED照明の生産増加を背景に、LED基盤のサファイア製造装置用イリジウムルツボの需要も急増している。
ただ、ルツボの増産に乗り出そうにも、「原材料のイリジウムが足りない、という状況だった」(古屋堯民社長)。三菱商事を通じて南アフリカの鉱山会社2社から原材を調達していたが、それだけでは一段の需要増には対応できない懸念があった。