「購買力平価だと円安は行き過ぎ」論はもはや昔話 円安でも輸出は増えず、投資のみで稼ぐ日本

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しかし、円の実質実効為替相場(REER)が半世紀ぶりの安値を漂う中、日本経済は海外からインフレを輸入するような状況が続いている。資源を筆頭とする財輸入がわかりやすいが、訪日外国人観光客(インバウンド)を招き入れることに伴う一般物価(象徴的には宿泊・飲食サービス価格など)の高騰もある。

物価上昇で購買力平価のほうが円安に収斂する

このような動きが極まっていけば、日本でも諸外国に見劣りしない物価上昇が起きる可能性がないとは言えない。その時は購買力平価が円高を示し続けることも当たり前ではなくなるのではないか。

言い換えれば、購買力平価が円安に振れることで実勢相場に接近してくることもありえるということになる。

筆者はどちらかと言えば、そのような未来に向かってドル円相場は推移し始めているのではないかと思っている。これまで100~120円というレンジでやってきたものが、120~140円などのレンジにシフトアップしている。そうしたイメージを抱きながら中長期的なドル円相場のストーリーを描いていきたいと考えている。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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