「ピルって悪魔の薬?」誤った性教育がもたらす危険と、大人が知るべき性の知識 20代「避妊したくない」コメントが多い事情は
「まず『自分には性知識がない』と自覚できていないことが問題です。例えば、性行為の経験があるのに性感染症検査を受けたことがないのであれば、すでに性知識が十分とは言えません。性知識のない大人は、無意識に子どもたちの性教育を妨害してしまう可能性があります」
20代が「避妊せずに性交したい」と感じる理由
瀧本氏のYouTubeチャンネルには日々、性に関する相談や質問が寄せられるという。悩みの種類は年代によって異なるが、「まさにホルモンの分泌どおりの質問が来る」と瀧本氏は分析する。
・「コンドームを装着せず安全に性交するにはどうすればよいか」
・「避妊せずに性交したいのでアフターピルについて知りたい」
→男女共に妊娠適齢期であるため、本能的に子孫を残そうと体が避妊を拒んでいるのではないか
・「パートナーを楽しませるには何をするとよいか」
→子どもを確実に育てるために、「夫婦の親密さ」を保ちたいのではないか
・「夫がすぐに疲れてしまうので、愛情が薄れたのではと不安になる」
・「妻を満足させられているか心配」
→ホルモン分泌の減少によって、性欲の減退や体力の衰えがあるのではないか
・「こうした情報をもっと早く知りたかった」
・「今からでも楽しみたい」
→生殖活動が終わり、娯楽やコミュニケーションとして性を楽しんでいるのではないか
「でも、年代を問わずいちばん多いのは『性の悩みを誰にも相談できない』という声です。親に性の話題を禁じられた記憶は成人後も響きます。例えば、幼少期に性器を触った際に『そんなところ触っちゃ駄目!』と厳しく言われたり、性交を汚らわしいとする発言や態度を取られたりすると、性について疑問や問題を感じても「話してはいけないことなのだ」と思うため、人に相談できなくなってしまいます。大人になってからも、性交痛などを感じても相手に伝えられず、自分を責めてしまう人もいます」

(画像:YouTube「瀧本いち華の性知識アカデミー」より)
学校の性教育では、いま妊娠したら生活はどうなる? 責任取れる?と、「性交はしてはいけないこと」というニュアンスで教えることが大半だ。瀧本氏によれば、そもそも日本の性教育のルーツは、戦後間もなくの日本で性の乱れを取り締まるために行われた『純潔教育』にあるという。「性交は結婚後に結婚相手とするもの」「性の話題を公でしてはならない」という規範が連綿と残り続けていることも、一歩踏み込んだ性教育が阻まれる要因の1つだと瀧本氏は語る。
「性交のよい面をまったく伝えない教育の下で、性嫌悪になる人も一定数存在します。ある男性から『彼女とセックスをしたいと思ってしまう。大切な人を汚すようで自己嫌悪になる』と相談が来たことがありました。これは、性交を単なる欲望のはけ口として認識しているからでしょう。性交はお互いを思う気持ちを表現する最上級のコミュニケーションですし、大切な相手とつながりたいと思うのは人間としてごく普通のことです。仮に相手が夫婦や恋人でなくても、相手の嫌なことはしないという思いやりがあれば、それは両者にとってよい時間になるはずなのです」
性交同意年齢の16歳までにすべてを知っておかなければならない
一方で、大人に性知識を普及させるのはハードルが高いのも事実だ。
「私のYouTubeでも、学びの要素が強い動画は再生回数が伸びません。でも、相手を気持ちよくさせるための動画や、モテるための動画なら興味を持ってもらえます。性知識を得るきっかけは真面目にでも下心でも何でもよくて、たどり着く知識は結局同じだったりします。『自分の知識は古いかもしれない』と疑いながら、気になることから調べてほしいです」