「ピルって悪魔の薬?」誤った性教育がもたらす危険と、大人が知るべき性の知識 20代「避妊したくない」コメントが多い事情は
②自分の認識をアップデートすること
③偏見を持たないこと
大人が正しい性知識をつけたうえで、子どもとは何を話すべきか。瀧本氏は「教員の性教育と、保護者の性教育は違う」として次のようにアドバイスをする。
「教員は自分のバイアスをかけず、事実を正しく伝えてほしいです。リスクやすばらしさなどは、大人が自分の感情を先回りして伝えるのではなく、子どもが自分で考えるからこそ心に残るのだと思います。一方で、保護者は親としてある程度バイアスがかかっていてもよいと考えます。自分の意見を『押し付ける』のはよくないですが、学校で習った事実に対して、『私はこう感じるけど、どう思う?』『これは気をつけてほしいな』と親として自分の意見を率直に伝えると、子どもも自分の考えにより向き合うことができるのではないでしょうか。子どもが自分の考えを持てることがとても大事です」

(画像:YouTube「瀧本いち華の性知識アカデミー」より)
性教育の目安は「性交同意年齢」を1つの区切りにするとよいと瀧本氏は語る。2023年3月に閣議決定された刑法改正案では、性的同意年齢が16歳に引き上げられる。そのため、「遅くとも高校入学までには性交とはどういうもので、その先どうなるのかをすべて知っている必要がある」と瀧本氏。とくにオランダの教科書には日本の大人でも知らないような内容が載っており、日本もこうした充実した性教育を取り入れたいところだ。
「性教育ムーブ」の裏ではまだまだ注意が必要
昨今は性について発信する人が増えており、SNSなど自ら情報を得られる場も増えた。瀧本氏は「性教育ムーブが起きている今こそ変わりどき」とする一方で、注意も必要だと指摘する。

「ほとんどの人は正しい情報を発信していますが、中には医学的に誤った情報を流している人もいます。また、『この人の話はすべて信じよう』と盲信的にはならないでほしいのです。例えば、アダルトビデオに出演している方が、作品とは異なる事実を発信するような動きは大変ありがたいことです。しかし、最近はこうした活動がある種のブームにもなっているため、正しい発信をしている人に乗じて、誤った情報や個人の価値観を押し付ける発信をしている人もいます。そもそもコミュニケーションは目の前の相手がいてこそのものなので、絶対的な正解はありません。さまざまな情報を得て見抜く力をつけてくださいね」
最後に瀧本氏は、「現在の社会ではまだ、性の発信をすることにリスクがある」と語る。男女を問わずセクハラをしてもよい対象だと勘違いされて、怖い思いをすることも多いという。瀧本氏がマスクを着用するのも、少しでもプライバシーを守れるように先輩からアドバイスを受けてのものだ。子どもへの心配が先立って「性の抑制」に偏ったり、性教育の発信者に勝手な偏見を抱いたり。そうしたバランス感覚に欠けた大人の言動が、性へのネガティブなイメージを助長すると瀧本氏は懸念している。人間の純粋な好奇心や知識欲を大切にし、子どもの思考や疑問に丁寧に耳を傾ける姿勢が、性教育においても重要だろう。
(文・末吉陽子 編集部 田堂友香子、注記のない写真:瀧本氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
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