「ピルって悪魔の薬?」誤った性教育がもたらす危険と、大人が知るべき性の知識 20代「避妊したくない」コメントが多い事情は

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人間が生きるうえで、自分や他者の身を守り、人生をより豊かするために「性」と向き合うことは避けて通れない。しかし、日本の性教育はオランダやスウェーデンなどの性教育先進国と比べてかなり遅れており、成人してからも性を学んだり語り合ったりする機会に乏しい。この状況に問題意識を持ち、大人に向けて正しい性知識を広めているのが日本性知識普及協会理事長の瀧本いち華氏だ。「大人が性を学び楽しもうとしている姿を子どもたちに見せることが大切」と語る瀧本氏に話を聞いた。

「ピルは悪魔の薬」と語る友人に愕然

瀧本 いち華(たきもと・いちか)
「タブー視されている性の知識を大人に広める」をテーマに、日本性知識普及協会を発足。性に関する知識を、理論的にわかりやすく学べるよう発信を続ける。YouTubeチャンネル「瀧本いち華の性知識アカデミー」は登録者19.2万人超(2023年6月現在)。著書に、『人に言えない男女の悩みをすべて解決する おとな性教育』(KADOKAWA)
(写真:東洋経済撮影)

瀧本氏はタブー視されている性の知識を大人に広めることをテーマに、大人向けにYouTubeをはじめSNSで幅広い情報を発信している。その内容は主に、「性教育」「性交」「男女の性質」の3つ。瀧本氏自ら研究や論文を基に情報を精査しており、その理論的でわかりやすい解説は幅広い世代から支持されている。瀧本氏の活動の原点は、自身が「高校時代にすごく充実した性教育を受けた」ことにあるという。

「高校1年生の時の授業で、人が生まれる過程を包み隠さず映したビデオを見せてもらえたんです。そこには、男女が付き合って、性交をして妊娠をして、そして出産するまでの流れが描かれていました。赤ちゃんが産道から出てくるシーンもあり、生命の誕生がどれほど奇跡的であるかをまざまざと感じました。先生から価値観を強制されることなく、淡々と事実を見て自分なりの感想を持てたのがよかったのでしょう。中絶や避妊などの説明はありませんでしたが、こんな奇跡の連続で生まれてくる命を堕(お)ろすなんて考えられないと思いまして、だからこそ、今の私に性交や妊娠は早いなと自覚しました」

瀧本氏のYouTubeチャンネル「瀧本いち華の性知識アカデミー」

その性教育のおかげで、ほかの教科と同じように不明点をきちんと調べて知識をつける習慣がついたという瀧本氏。ところが大人になってから、自分の受けた性教育はかなり珍しかったこと、そして同世代があまりに性知識に乏しいことを知り愕然としたという。

「子宮内膜症で悩んでいた友人に低用量ピルの話をしたら、『え? それって子どもを殺す悪魔の薬でしょ?』と返ってきたことがありました。また、膣外射精を正しい避妊法だと信じている子もいたりして、とにかく驚いたし、やるせない気持ちになりましたね。そこで日本の一般的な性教育を調べるうち、そもそも性教育を施す側の大人たち自身が正しい性知識を持っていないことに気づいたのです」

日本の一般的な教育を受けた大人の8〜9割は十分な性知識を持っていないと考察する瀧本氏。性を正しく学ばないと「性=いかがわしくて危険」というバイアスがかかり、ひいてはそれが、性の話題をタブーとする日本の空気感の要因なのではと瀧本氏は指摘する。

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