「依存させて強盗」ギャンブルが導く恐ろしい選択 借金1000万、家族離散になってもやめられない

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オンラインカジノ
コロナ禍以降、オンラインカジノにハマる人が急増している(写真:Graphs/PIXTA)

「強盗事件などの報道を見ると、『もしかしたら夫も加害者になっていたかも……』と背筋が寒くなります。依存症当事者の家族は、この恐怖を常に抱えているんです」

ギャンブル依存症の夫を持つAさんは、時折声を詰まらせながらこう語った。40代の夫は、ギャンブル依存症とうつで入院中だという。

ギャンブルによる借金が絡んだ事件が相次いでいる。5月には東京都江戸川区で60代男性を殺害した容疑で中学校教諭の男性が逮捕され、FXやギャンブルで数百万円の借金を抱えていたと報じられた。

スマホ1つでできるオンラインギャンブルの普及もあり、良き夫、良き働き手だった人が、ささいなきっかけで急激に依存に陥るリスクが高まっている。

「まじめで優しい夫」が教育資金や貯金を使い込んだ

江戸川区の事件で逮捕された男性教諭は、教え子や保護者からは「良い先生で信じられない」との声が多数上がったとも伝えられる。「ギャンブラー」という言葉には金にだらしない、粗暴な人格といったイメージがつきまとうが、実際はまじめで優しい人も多い。

5月中旬、都内のギャンブル依存に関する勉強会に登壇したAさんも、夫について「優しく論理的で、イメージとは真逆のタイプ」と話した。夫は理系の大学院を出て一部上場企業で20年以上勤務しており「ギャンブル依存症になるなんて、今も信じられません」。

一家の生活が暗転したのは2年ほど前。Aさんが銀行に通帳記入に行くと、いつまでも記入が終わらない。「詐欺に遭って多額の現金が引き出されたのでは?」と、手が震えるほどの恐怖にかられた。その夜、夫から「ストレスがたまり、ギャンブルに使ってしまった」と聞かされた。

夫はほどなく何枚ものクレジットカードを限度額いっぱいまで使うようになり、子どもたちの教育資金や、Aさんが働いて蓄えた貯金も使い果たした。Aさんのブランド物のバッグや、結納で贈った高級腕時計も家から消えた。

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