
清武英利(きよたけ・ひでとし)/ジャーナリスト。1950年生まれ。立命館大学経済学部卒業、75年に読売新聞社入社。2011年に読売巨人軍球団代表を解任され係争に。『しんがり 山一證券最後の12人』『トッカイ 不良債権特別回収部』など著書多数。(撮影:風間仁一郎)
トヨタ自動車という巨大企業の中で、2台のスポーツカーの開発に挑んだエンジニア。企業ノンフィクションの名手が物語を通じて伝えたかったこととは。
──清武さんといえば、負け組企業で奮闘する人々を描く名手という印象があります。しかし、意外にも今作は大企業の、それもエリート社員たちが華やかなスポーツカーの開発に携わる物語です。
20年前、読売新聞時代に『トヨタ伝』という本をまとめた。その取材で初代「カローラ」のチーフエンジニア(CE)だった長谷川龍雄さんら強烈な個性を持つエンジニアに会って、いつかエンジニアの物語を書きたいと思っていた。
トヨタは生産技術や工場で語られることが多いが、製品開発がなければ一流にはなれなかった。生産技術や工場に人がいるなら、開発にも人がいるのは当たり前だ。
4年前、本書にも出てくる北川尚人さん(元CE)に多田哲哉さんを紹介してもらって「面白い人だなぁ」とインタビューをして雑誌に載せた。最初からスポーツカーの開発物語を書きたかったわけではなく、多田さんに話を聞くうちに強固な組織で仕事をするエンジニアの“つらさ”や“面白さ”を描きたくなった。
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