──清武さんといえば、負け組企業で奮闘する人々を描く名手という印象があります。しかし、意外にも今作は大企業の、それもエリート社員たちが華やかなスポーツカーの開発に携わる物語です。
20年前、読売新聞時代に『トヨタ伝』という本をまとめた。その取材で初代「カローラ」のチーフエンジニア(CE)だった長谷川龍雄さんら強烈な個性を持つエンジニアに会って、いつかエンジニアの物語を書きたいと思っていた。
トヨタは生産技術や工場で語られることが多いが、製品開発がなければ一流にはなれなかった。生産技術や工場に人がいるなら、開発にも人がいるのは当たり前だ。
4年前、本書にも出てくる北川尚人さん(元CE)に多田哲哉さんを紹介してもらって「面白い人だなぁ」とインタビューをして雑誌に載せた。最初からスポーツカーの開発物語を書きたかったわけではなく、多田さんに話を聞くうちに強固な組織で仕事をするエンジニアの“つらさ”や“面白さ”を描きたくなった。
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