池袋西武への出店にこだわるヨドバシの深慮遠謀 ビックと全面対決で塗り変わる家電量販地図

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業界関係者によると、巨艦店の「マルチメディアAkiba」や「マルチメディア梅田」の店舗売上高は年間1000億円程度、大型店の「マルチメディア横浜」は同500億円程度だという。

札幌に加え、池袋西武にも出店できたとすると、22年3月期に7530億円だったヨドバシの売上高は1兆円近くに。業界2位のビック(22年8月期売上高は7923億円)をしのぎ、業界首位のヤマダホールディングス(23年3月期売上高は1兆6005億円)の背中も見えてくる。ヨドバシの池袋西武への出店は、池袋駅前の家電地図だけでなく、家電量販店の業界地図をも変えてしまうインパクトがあるのだ。

「駅前の顔」が家電へ

このように百貨店が家電量販店に転換した例は少なくない。左表のとおり、有楽町駅前のビックカメラはそごう東京店だったし、12年にユニクロと共同出店した「ビックロ」は三越新宿店だった(22年6月にユニクロが撤退し店名変更)。ヨドバシも横浜や吉祥寺の店舗など、百貨店の跡地に出店している。

そもそも百貨店もかつては家電を取り扱っていた。だが郊外に立地する家電量販店が台頭するにつれ販売は低迷。百貨店から家電売り場は消えた。一方で消費の変化によって百貨店業態そのものが壁に直面し、百貨店は各地の店舗を閉鎖した。現在は生き残った都心の百貨店に家電量販店が舞い戻っている構図だ。

家電量販店は内装へのこだわりが小さく、改装費用が抑えられる居抜き出店に抵抗がない。流通関係者は、「冷蔵庫や洗濯機といったサイズの大きい家電は、『空気を売っている』ようなもの。空いた百貨店の巨大な売り場を埋められるテナントは、もはや家電量販店くらいしかない」と指摘する。

ただ、百貨店は目下、コロナ禍からの経済活動再開により猛スピードで回復している。好立地の巨大物件を狙う家電量販店と店舗を守りたい百貨店、両者の攻防戦は今後もヒートアップしていくだろう。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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