本州と北海道結ぶ「貨物新幹線」実現への大胆試案 門型クレーンを活用して貨物駅をコンパクトに

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現行、日本の国内貨物の鉄道シェアは5%で、海外と比べて著しく低く、トラックが道路で行き来できない北海道―道外ですらわずか8%だ。その分、貨物新幹線により利用を増大できる余地が大いにある。

既存シェアの拡大・全体の拡大・平均運賃の上昇により、北海道と道外を結ぶ鉄道貨物マーケットの現行の年200億円を300~800億円に拡大できる可能性は充分にある。

貨物新幹線はいいことずくめ

今までの貨物新幹線の検討では、現行輸送量を代替との発想でマーケット拡大を見込まず、車両と地上設備への多額の投資回収は難しいとの判断だったが、発想の転換により投資回収を見込める。

鉄道貨物マーケットが拡大すれば、JR貨物の採算性は大幅に向上する。同時に、アボイダブル・コスト・ルールで低額とされている旅客会社への線路使用料を引き上げられ、JR東日本と北海道の採算性も向上する。

さらに、共用走行区間での旅客新幹線の速度制限を解除できる効果も大きい。新幹線の大宮―札幌間は1004kmで、もし全区間をJR東日本が準備を進めている時速360kmでノンストップ走行すれば、単純計算でその所要時間は2時間47分となる。途中駅での停車を考慮すると速達便は仙台・新青森・新函館北斗のみ停車とし、加減速ロス+停車時間を5分×4=20分、余裕時分を2時間47分+20分の8%の15分として大宮―札幌間が3時間22分となる。東京―大宮間をノンストップ22分として東京―札幌間は3時間44分となる。東京―広島間の3時間50分前後より短く、強い競争力を持てる。

コロナ禍前の首都圏―札幌間の流動の年間1000万人に対し、行動変容による移動減はあっても、利用拡大や旭川・帯広・小樽等との行き来も加え500万人以上の利用を期待できよう。JR東日本と北海道は大幅売り上げ増となる。

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以上のように、貨物新幹線は北海道の鉄道を旅客・貨物ともに大きく変える。北海道と本州のヒトとモノの行き来が格段に便利になり、北海道そのものも大きく変える。食料確保を中心に国家安全保障にも貢献する。メリットは計り知れず、何としても新幹線札幌延伸と同時に実現したい。

そのために、試作車を設計・製造し、仙台と新函館北斗の付近に新幹線貨物駅を設置し、2027年度くらいから試験営業を始めることを提案する。それにより、速度と積載重量に応じた軌道破壊量を理論計算と現地測定により求め、量産車の適切な速度と積載重量を定める。

現行、繁忙期には20m×20両編成×約25往復の貨物列車が運行している。本格運行時はマーケット拡大によりその数倍の輸送力を要し、例えば20m×30両編成×50往復といった運行となる。多くの読者の想像を超えた編成両数と運行頻度だろうが、北海道―本州間の物流ニーズはそれほどあるのだ。

阿部 等 ライトレール社長

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あべ ひとし / Hitoshi Abe

1961年生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院修士課程修了。1988年JR東日本入社。2005年ライトレール創業。交通や鉄道にかかわるコンサルティング・研究開発に従事。著書に『満員電車がなくなる日 改訂版』(戎光祥出版)。

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