小田急ロマンスカーVSE、完全引退まで最後の力走 定期運行終了後も、貸し切り列車で多忙な週末

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小田急はVSEを活用したイベントを次々と打ち出している。大型連休期間をみても、4月29、30日に子ども連れ向けのロマンスカーミュージアム貸し切り見学とVSE乗車ツアーを実施、5月3~5日は「乗り鉄・撮り鉄・音鉄」を対象にした2本のVSEによる追いかけっこリレーを“新行路”で走らせる予定。VSEのイベント列車は人気が高く、5月14日の「JALの客室乗務員と行く」VSEの旅は即日完売したという。

VSEの展望席
貸し切りだと自慢の展望席も向かい合わせのラウンジ仕様にできる。後ろのほうが落ち着いて眺めを楽しめる?(記者撮影)

自分で「貸し切る」という手も

定期運行を終えたVSEに乗車するには、小田急主催のツアー以外に、1編成丸ごとチャーターする「VSE貸切プラン」を利用する手もある。「鉄道ファンの方々のコミュニティの場やイベント、企業の懇親会、結婚式、同窓会など、幅広いシーン」(同社)を想定した期間限定の特別企画だ。

新宿から秦野、新百合ヶ丘車庫線、唐木田車庫を巡って新宿に戻る「小田急周遊プラン」と、新宿から大野総合車両所を経て小田原へ向かう「小田原行きプラン」を設定した。4月以降の旅行代金は周遊が144万円、小田原行きが98万円。最少催行人員は1人で、VSEを“独り占め”することもできる。一方、最大乗車人員の250人の場合は1人あたり5760円の計算で手軽に利用することが可能だ。

すでに2023年11月末までの期間を受け付けており、9月以降は平日のみの利用で、12月以降の催行はない。小田急トラベル営業サポート部の課長、米田将人さんによると、2022年10月の開始から半年間で20件ほどの利用実績があり、この先も約20件の予約が入っている。中には1人利用の申し込みもあるという。

米田さんは「貸切プランは17年間の定期運行のなかでのさまざまな思い出を持ったお客さまが自分たちで企画できるのがメリット」と話す。土日の予約は埋まりつつあるが、平日はまだ空きがあるという。

少なくとも11月末までは貸切プランで運行することは確実だが、完全引退が現実味を帯びてきたVSE。週末を中心に多忙なラストスパートが続きそうだ。ファンにとって最終日に駅に押しかけるばかりが別れを告げる手段ではない。ゆっくりとVSEの乗り心地を楽しむ機会はまだ残されている。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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