ミドルリーダーに伝えたい、先輩教員の「質問力」が若手の成長を左右するワケ 「彼らが何を求めているか見極めることが重要」

「官製研修」に足りないリアルさを、実践者として見せる
岩手県の公立小学校に勤める古舘良純氏は、初任者教員や若手教員への接し方について、「教えるのではなく感化することを目指している」と語る。
「僕はとにかく相手にたくさんの質問をしています。『何でも聞いてね』と言うだけでなく、こちらから『何でも聞いていく』というスタンスです」

岩手県花巻市の公立小学校教諭。1983年岩手県生まれ。菊池道場岩手支部長、バラスーシ研究会所属。初任者研修などで道徳の授業を公開するなど、若手への助力も惜しみない。執筆やSNSでの発信も積極的に行い、著書に『小学6年担任のマインドセット』『子どもと教師を伸ばす学級通信』『ちょこっとシリーズ』のほか、最新刊に『ミドルリーダーのマインドセット』『学級を育てるばっちりトーク』がある(すべて明治図書出版)
(写真:古舘氏提供)
初任者研修や2年目・3年目研修をはじめ、教育委員会などによるいわゆる「官製研修」も行われている。だが古舘氏は、これらの研修には「リアルさが足りない」と指摘する。
「すでに現場を離れている先生方は学級を持っていない状態なので、若手に事実や実例を見せることはなかなかできません。僕の主催する勉強会に来てくれる若手からも『こっちのほうが教室をイメージできるので楽しい』『この勉強会を知ってしまうと、官製研修がつらく感じてしまいそうです』という声を聞きます。せっかくの研修の場なので、われわれのような現場のリアルな『実践者』と若手教員をつなぐ機会になるといいのですが……」
古舘氏は若手教員と経験豊富な教員の隔たりを、登山に例えて説明した。
「初任者研修などでは、目標である山頂を示し、さらにいくつかの登山ルートを示すかもしれません。でも若手が知りたいこと、知らないと困ることは、たぶんそういうことではないと思うのです」
山に登る際には、靴はどんなものを履いたらいいのか。上着はどう選べばいいのか。初任者教員たちは、ギアの選択肢やその必要性すら知らないかもしれない。だから古舘氏は「どんな服装で行くつもり?」と率先して質問する。問いに対する答えを聞くことで、相手がどんな情報を求めているかが見えてくる。