ミドルリーダーに伝えたい、先輩教員の「質問力」が若手の成長を左右するワケ 「彼らが何を求めているか見極めることが重要」

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「選択肢は示しますが、結果として彼らが自分で決めたのだと思えるように導くことも大切です。そうでないと『こうしろって言ったじゃないですか!』という他責思考になりかねない。質問をすることは、こちらが君に興味がある、好意的であるということの意思表示にもなります。相手をよく観察し、求めているものを見極めるための質問は、互いに信頼関係を築くためにも重要なことなのです」

「初任者教員に質問をすることは自分にとっても得」

「質問をする」という手法は、古舘氏が心がけているもう1つの狙いにもつながっている。それは「面倒を見る」ことと、それにとどまらず「責任を取る」ことまで一貫して行うことだ。

実例を示そう。研究主任を務める古舘氏は、学年主任ともかけ合って、自らの授業を含めた多くの授業をオープンにしている。初任者教員が自由に授業を見学できる体制を整えたことは、まず「面倒を見る」ことに当たる。さらに古舘氏は「責任を取る」ための取り組みとして、授業を見に来た教員にたくさんの質問をするという。

「初任者教員に『今日のこの授業、どうだった?』と問いかけて、答えが返ってきたらさらにその理由を聞く。『それで?』と言ったり『君ならできそう?』と畳みかけたり。とにかく振り返らせて、内省を促すのが目的です。せっかく授業を見たのに、それで終わりにしたら経験の質が下がってしまう。そこまでフォローしてこそ、責任を取ったといえるかなと」

多くの質問をすることの最大の目的は若手教員の成長であるため、ギブ・アンド・テイクの観点でいえば、古舘氏にとっては「ギブ」が大きいものに見える。だが古舘氏は、自分の「テイク」も非常に大きいとほほ笑む。

「授業を見てどう感じたかを聞けるのは自分のためにもなるし、自らの質問力を高めるのは僕にとって得になりますよね。子どもへの指導にも必ず生きてくるし、同僚やそれ以外の人とも仲良くなる力がつく。先生だろうが社会人だろうが、人は人の中で生きていくものだから、これはWin-Winだと思いませんか」

若手教員によく見られる失敗にはどんなものがあるのだろうか。古舘氏はまず1つ目に「スマホやパソコンにかじりついて、SNSやネタサイトなどに振り回されてしまうこと」を挙げた。自身もSNSアカウントで多くのフォロワーを抱えているが、発信の仕方には細心の注意を払っている。

「ネット上では多くの人が多くの持論を述べていて、まったく反対のことを言う人もいる。僕のSNSでの発言も、相手が見えない状況ではアドバイスではなくただの持論です。そうしたものやコンテクストのわからない発信を真に受けるのは、あまりよくないと思います。誰かの実践をネットで探さなくても、隣の教室に行けば先輩がリアルな授業をやっているのです」

自身についても「自分でやったことしか書けない」と語る古舘氏。若手にも同じく、自分自身の経験を大切にしてほしいと考えている。だからこそ同氏は授業を自由に見学させ、目の前の相手にたくさんの質問をするのだ。

しなやかにしたたかに、やがてしっかり自走できる存在に

古舘氏は「僕自身も若い頃、周りと散々ぶつかって失敗しましたが」と苦笑いするが、やる気にあふれた提案だとしても、「〇〇さんのSNSで見た」「この間セミナーで聞いた」などという伝え方では、職員室ではなかなか受け入れられないという。同氏が勧めるのは「しなやかにしたたかに、周りとぶつからない方法」で取り組むことだ。

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