ミドルリーダーに伝えたい、先輩教員の「質問力」が若手の成長を左右するワケ 「彼らが何を求めているか見極めることが重要」

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「学校で教員たちの責任を取ってくれるのは校長先生や学年主任の先生なので、その理解を得られるやり方を考えるといいと思います。校長先生の方針や学校教育目標に準じて、その達成のためにこの手法が必要だときちんとひも付けできるといい。『知・徳・体』を網羅した教育目標が立てられている学校が多いので、この3つをきちんと意識していれば、職員室で浮いてしまうこともないはず。やりたいことをやりながら、自分自身を守ることにもなる。これは学年経営などに関しても同じです」

もう1つ、同氏が案じる若手の失敗は、「身の丈に合わない実践を重ねるうち、自分のやりたかったことを見失ってしまう」ということだ。

「例えば、掃除当番や給食当番を示す円形の表がありますよね。あれ一つとっても、並べる順番や男女比など、経験を積んでこそわかる重要なポイントが隠れているのです。それを説明せずにパッケージだけを渡すのは、面倒を見ているだけで責任を取ってはいないかもしれません。ベテラン教員のハウツーを安易に若手が教室に下ろしてもうまくいかないことが多いし、その失敗の理由に、本人の力だけで気づくのは難しいことだと思います」

古舘氏はそんなときにもたくさんの質問をすることで、彼ら自身が何をしたかったのかを思い出させるようにしている。大切なのは、若手教員の意識のベクトルを、外側から内向きに変えることだという。

「ほかの教員にどう思われるか、保護者や子どもにどう見られるか、彼らの意識はどうしても外へ向かってしまいがちです。その矢印を内に向けて『自分はどう思っているのか、自分は何を感じているのか』ということを考えてほしいのです」

内向きの分析を極めることは、自己中心的になったり、自己満足に走ってしまったりする危険もはらんでいる。そこにブレーキをかけるのが、前述の「学校教育目標の理解」といった姿勢だ。古舘氏は「自分が学校職員の一人であるという意識をしっかり持ち、学校に貢献する気持ちを忘れなければ、教員の独り善がりになってしまうことも防げる」と話す。

「さまざまなアプローチで目指しているのは、若手教員が僕らの伴走を経て、一人で自走できる存在になっていくことです」

古舘氏はそう語るが、それは子どもたちへの教育における目標と同様のものだ。若手を支援する同氏の1つの取り組みは、また別の取り組みと自然につながる。やがてそれらが循環し、教育現場全体の理論になっていることに気づかされるだろう。回り道にも見えるやり方で、古舘氏は自ら、しなやかでしたたかな教員像を示している。

(文:鈴木絢子、注記のない写真:tabiphoto / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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