山形県「新採教員に1人で担任を持たせない」体制開始、「若手の退職」に危機感 精神疾患による退職も増、相談しやすい環境へ

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山形県教育委員会が2023年度から導入した制度が注目を集めている。一定規模以上の県内の公立小学校に配属した大卒の新規採用(以下、新採)教員を、「教科担任兼学級副担任」とする試みである。大学を卒業したばかりで経験のないまま、いきなり1人で教材研究や授業準備、学級経営、生徒指導などに追われてしまうのは負担が大きいため、導入を決断したという。取材から、若手教員の離職率上昇や採用倍率の低下など、現場の深刻な課題が改めて見えてきた。

「採用倍率」が低下、進行する「学生の教職離れ」

全国に先駆けて、小中学校の全学年を対象に少人数学級を独自に実現したことで知られる山形県。2002年度から順次開始し、33人以下の学級編制を11年度に完了した。「教育山形『さんさん』プラン」と称し、特別支援学級の編制基準を8人から6人へと引き下げるほか、低学年副担任制や、退職教員などを小中学校に配置して授業改善を図る「教育マイスター制度」なども展開してきた。

「県内の教育課題などを踏まえつつ、きめ細かな指導の下、生活と学習が一体となった『わかる授業』や、『いじめや不登校のない楽しい学校』を目指して推進してきました」(県教委担当者)

「さんさんプラン」による「低学年副担任制」を取り入れている山形県の小学校
(写真:山形県教育委員会提供)

プラン導入後しばらくは不登校児童生徒数(30日以上欠席)の出現率が低下するなど、少人数学級の成功事例として全国的に注目された。21年度の学校アンケートでも「主体的に学習に取り組ませる指導に効果がある、または効果が期待できる」という質問に対して「そう思う」との回答が7割を超えるなど好評で、「とくに授業改善に取り組む学校が増えたことは大きな成果」と県教委担当者は言う。

そのようにさまざまな教育施策を打ってきた県教委だが、現在、喫緊の課題となっているのが教員の働き方改革だ。県教委は22年度末までに複数月平均の超過勤務時間(在校等時間における超過勤務時間)が「過労死ライン」の月80時間を超える教員数0人を目指して取り組んできた。

しかし、22年度上期の6カ月平均で残業80時間超の教員数は小学校8人(前年度比28%減)、中学校98人(同34%減)、高校156人(同11%減)と前年度比では減少したものの、目標値の40%減までは届かなかった。また、時間外在校等時間(1人1カ月平均)は小学校37時間(同2%増)、中学校47時間56分(同0.3%減)、高校44時間26分(同3%減)と、全校種において下げ止まりの状態で、中でも小学校は40分近く増加。背景には、探究的で、創造性に富む資質・能力を身に付けさせる指導などが求められる一方、部活動や児童生徒とその保護者への対応など、教育課題の多様化や複雑化があるという。

さらに長時間勤務問題によるイメージの低下もあったのか、学生の「教職離れ」が進行。山形県の教員全体の採用倍率(志願者数/募集人数)は13年の7.2倍から22年度には2.5倍になり、とくに小学校は5.2倍から1.5倍まで低下した。

そこで県は23年度予算で、教員の働き方改革の施策として6億9051万円を計上。うち約3分の1と大きな割合を占める2億2899万円を充てたのが、新卒の小学校教員の育成支援である。

若手教員の「精神疾患を理由とした退職」も増加

県教委がとくに危機感を募らせているのが若手教員の離職者の増加だ。県の採用5年目までの若手教員退職者数は2017年度の13人から21年度は30人と2倍以上に増加した。中でも精神疾患を理由とした退職は17年度の2人から20年度、21年度はそれぞれ7人。退職者に占める割合も17年度の15%から20年度は32%、21年度も23%と増加傾向にある。

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