山形県「新採教員に1人で担任を持たせない」体制開始、「若手の退職」に危機感 精神疾患による退職も増、相談しやすい環境へ

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この事態に、大学を卒業したてで経験の浅い教員が学級担任となり、授業から生活指導、保護者対応まですべてを1人で担うのは負担が大きすぎるのではないかという認識が浮上。そこで、大卒新採教員については、採用1年目の負担を軽減して育成を図るため、学校規模にはよるものの、学級担任を持たせずに「教科担任兼学級副担任」にすることにした。

どの教科を担当するかは各学校に委ねるが、特定教科の担当に絞ることで教材研究や授業準備の時間を十分に確保するとともに、先輩教員の下で学級経営を学んでもらうことが主な狙いとなる。

教科担任兼学級副担任の導入は、県内に223校ある公立小学校のうち、一定規模以上の39校で実施する。「5年生または6年生が3学級以上ある規模の小学校を対象としており、新採教員の教科担任としての授業時間数は週17コマを目安に設定しています」と県教委担当者は説明する。

そのほかの規模の小学校においては、新採教員でも学級担任を受け持つことになるため、再任用短時間勤務職員や非常勤講師などを支援員として配置することで空きコマを生み出し、新採教員の負担軽減を目指す。こうした仕組みは、「知る限り、全国初ではないか」と県教委は話す。

支援員の確保に向けては、退職者に積極的に声をかけるほか、教員免許を持っているが教職に就いていない人材を掘り起こすためのペーパーティーチャー向け説明会も実施。今年2月に開催した説明会では「育児が一段落したので再び学校と関わりを持ちたい人」など約70人の参加があった。ちなみに「教員免許はないが子どもと関わる仕事」を希望する人には、プリントの印刷や採点補助などを行う教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)などの仕事を紹介するなど、外部人材の活用によって教員が指導や授業に集中できる環境整備を進めている。

「デジタル採点サービス」の導入など多角的に負担軽減

また、先行して21年12月には若手教員育成ガイドブック『若手教員とともに育つ』を作成。それまでも新採教員に対してメンター教員をつけていたが、「忙しそうなメンター教員に相談を持ちかけづらい」という声などもあり、複数人のメンターがチームで対応する仕組みを整え、22年度から新採教員一人ひとりに「困り感」をヒアリングする取り組みも進めている。23年度もこの方針を継続し、悩みを相談しやすい環境を整えていく。

出所:『若手教員とともに育つ』概要版

山形県では、こうした新採教員の育成支援のほかにも、多角的に教員の負担軽減に取り組む方針だ。県立高校では、2022年度に15~20校で試行していたデジタル採点サービスを、23年度から全42校で実施する予算を確保。設問ごとの解答を一覧化して確認ができ、点数を自動集計するサービスで、「採点ミスや集計ミスが減るほか、観点別評価の分析も速くなると好評だった」(県教委担当者)ことから、全校展開に踏み切った。ウェブで出退勤を管理できるシステムも県内全市町村の学校に導入されたので、勤務時間の管理も引き続き徹底。そのほか、小中学校における教員業務支援員の全校配置や、中学校の部活動の地域移行も推進していく。

県教委担当者は「一人ひとりの声を聞きながら大卒新採教員の育成環境を整え、長時間労働問題を解消していくことで教職を魅力的なものとし、教員志望者の増加につなげていきたい」と話している。

(文:新木洋光、注記のない写真:ふじよ/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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