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味の素社長「値上げの波に乗ることが重要だ」 海外経験10年超、修羅場で培った経営手腕とは

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「値上げと賃上げは同時にすべき」と主張する味の素の藤江社長。海外の赤字国を立て直した経験を生かし、どう舵取りするのか。

味の素の主力商品
味の素の主力商品。多くの商品が値上げを余儀なくされたが、藤江社長は「循環的に物価が上がっていく社会をつくるのは、企業の責任の1つ」と話す(記者撮影)  
食用油やパン、菓子など全面的に値上げが相次ぐ食品業界。ウクライナ情勢による影響や円安も重なり、各社は激変する環境下で対応に追われた。ただ、業界大手の味の素はコスト上昇の影響を受けながらも、2023年4~12月期は過去最高の売上高と事業利益(国際会計基準)を記録した。
2022年4月に就任した藤江太郎社長は海外経験が長く、値上げに対するスタンスも他社のトップと異なる。この1年、どう舵取りをしてきたのか。

 

――難しい時期のトップ就任でした。どのように優先順位をつけてきたのでしょうか。

確かにピンチだったが、ピンチのときこそ明るく楽しくやることを大事にしているタイプで、悲壮感はなかった。いろいろな仕事や役割を担当してきた中、最初につまずくと後に響くことが多かったので、スピード感のある経営が大事だと思っていた。

100日で成果を出すことを意識した

日本企業も現場のスピードはグローバル企業に負けていないが、彼らは経営判断も非常に速い。そこで、就任時から「100日プラン」をつくって取り組んだ。100日で成果を出すこと、中期のロードマップをつくること。徹底的に課題を洗い出すことに分けて取り組んだ。

味の素の藤江社長
海外経験の長い藤江社長。値上げと賃上げを同時に実行していくことが大事だと、さまざまな場面で主張している(撮影:梅谷秀司)

成果を出すこととしては、コストがかなり上昇していたので、グローバルで製品ごとに状況を見える化し、素早く値上げに踏み切る仕組みをつくった。コストアップはさまざまなところで起きるので、把握をすることが大事だ。

各国のシェアの状況と、競合がいつ何%値上げしたかなどを一覧にして、役員や事業部長などで共有した。値上げが進んでいる国、政府の規制などで難しい国もあり、情報交換も進めた。値上げの第一歩を早く踏み出すようにできて、よかったと思っている。

北米の冷凍食品事業のチームが考えたのは商品の単価と総コストを示したグラフだ。上昇するコストと同じ幅で値上げが実行できていれば、マージンを確保できる。これができているかを毎月確認している。他の地域や事業でもなるべく応用するようにしている。

――業界では久々の値上げで十分な値上げができなかった、対応が遅れたとの声も聞かれました。

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