インクルーシブ教育の現状と課題。文科省の取り組みと日本国内外での事例を紹介
インクルーシブ教育のメリット
インクルーシブ教育により、子どもたちは、自分と異なる立場の人と関わることで、お互いを尊重したり思いやったりする心を育むことができるといわれています。
子どもの頃から違いを認め合う環境で過ごすことで、「みんなと同じこと」をよい、「みんなと違うこと」は悪いといった二元論の考え方ではなく、多様性を受け入れることができる子どもが育つと考えられています。
インクルーシブ教育の課題
日本では、インクルーシブ教育システム構築のため、環境整備や教職員の専門性向上が進められています。しかし、その対策はまだまだ十分とはいえません。

2022年8月、「障害者権利条約」について、国連・障害者権利委員会による日本政府への取り組み審査が実施されました。
その結果、教育の分野では、障害のある子どもたちが、とくにその程度が重い場合に特別支援学校への入学を要請され、地域の学校に受け入れてもらえない状況、障害のある児童生徒に対する合理的配慮が不十分であること、インクルーシブ教育における教員のスキル不足など、さまざまな問題を指摘されました。
インクルーシブ教育の事例
インクルーシブ教育は、小学校や中学校でどのように行われているのか、国立特別支援教育総合研究所の「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」から実践事例を紹介します。
小学校の事例
自閉症スペクトラムの診断がある小学2年生の事例。
幼稚園在籍時から、対人関係やコミュニケーションに困難さがあり、小学校に入学後、通常学級で学習面や学校生活面での困難さが表れるようになりました。
そこで、学級においては、「見通しを立てる」「視覚的な情報を意図的に取り入れる」などの指導や支援等を継続的に行いつつ、地域の小学校への通級による指導を活用しながら、社会性等について学習しています。
通級による指導の担当教員と担任、保護者は、毎週ファイルのやり取りで情報を共有し、通常の学級での支援に生かしています。さらに、それぞれの教員が相互の授業を参観したり、情報交換をしたりすることで、指導や支援に生かしています。
中学校の事例
中学校の自閉症・情緒学級に在籍する自閉症スペクトラムのある中学2年生の事例。
自分の興味がある教科については熱心に質問する様子が見られる一方、抽象的な内容や、自分にとって価値がないと思える教科にはまったく興味を示さず、自分の納得できない状況になると、パニックになり授業中でも教室を飛び出すこともありました。
また、予定の変更に弱く、突発的な時間割の変更等があると対応できず、授業に入れないこともありました。
中学校では、生徒の課題について、担任と保護者が相談して支援を進め、生徒に対して、見通しの持たせ方、感情コントロール、注意集中、こだわり、対人コミュニケーションなどの観点から合理的配慮を提供しました。
これらの合理的配慮の提供の結果、生徒は、教室移動に対応できるようになり、気持ちが崩れても、次の学習を考えてクールダウンする時間が短くなりました。
また、振り返りの時間を継続したことで、少しずつ自分の姿を客観的に捉えられるようにもなってきています。
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