山形・天童中部小学校「3つの型破りな授業」で子どもが自らぐんと伸びる訳 大谷敦司・前校長「子どもは有能な学び手」

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山形県天童市にある天童中部小学校は、教育関係者の視察が絶えない、全国的にも有名な学校だ。2018年から子どもたちが自立的に学びを進めることができるように、新しく3つの学習スタイルを取り入れ、授業が、学校が様変わりした。才能のある子への教育支援やインクルーシブ教育が注目を集める中、さらに関心が高まる天童市立天童中部小学校で型破りな授業を実践してきた前校長の大谷敦司氏に話を聞いた。

子どもが教壇に立ちクラスメートに授業をする「自学・自習」

山形県有数の温泉地、また将棋駒の産地として知られる天童市には、全国から注目を集める公立の小学校がある。天童市立天童中部小学校だ。

大谷敦司(おおや・あつし)
山形市教育委員会 社会教育青少年課社会教育係 社会教育推進員
山形大学地域教育文化学部・宮城教育大学教育学部非常勤講師。2018年に天童市立天童中部小学校に着任し、4年間校長を務め22年に定年退職。共著に『平成29年版小学校新学習指導要領ポイント総整理 生活』(東洋館出版社)などがある

何がそんなに注目を集めているのかというと、全体の授業時間の約2割に子ども主体の授業スタイルを取り入れており、そのユニークな学びを一目見ようと多くの教育関係者が視察に訪れている。2018年から4年をかけて、子どもたちが自立的に学びを進める3つの学習「自学・自習」「マイプラン学習(単元内自由進度学習)」「フリースタイルプロジェクト(個人総合)」を導入したのが前校長の大谷敦司氏だ。

「長年教員をやってきて、教員が一方的に教える授業は“子どもたちが手のひらで踊らされている”、つまり子どもが学んでいるというより学ばされているだけではないかという思いがありました。もともと子どもたちは有能な学び手です。できるだけ子どもに委ねて本来の力が発揮できれば、自ら学びを進めることができるはず。天童中部小学校で校長としての最後の4年間に、温めていた思いを形にしたいと考えました」

最初に考えたのは、もっと子どもに自由な時間があるといいのではないかということ。今の学校は、先生に言われて子どもが対応するというのが基本だ。だからといって急に「自由にしていいよ」と言われると戸惑うため、徐々に自由度を上げていこうと考えて取り入れたのが「自学・自習」だった。

「自学・自習」というと、子どもが机に向かって座り各自で勉強を進めるイメージが浮かぶが、天童中部小学校の「自学・自習」は子どもたちがクラスメートに授業をするスタイルを指す。先生に代わって子どもが先生役として教壇に立ち、教科書の解説をしたり、板書をしたりするのだ。はたして、そんなことが子どもにできるのだろうか。

「よく聞かれますが、もちろんできます。子どもは毎日、先生の授業を見ていて、それをまねすればいい。やってみると、教えられる人よりも教える人のほうが勉強しないといけないことに気づきます。誰かに教えるということは、自分が深く理解していなければできないから、必死に勉強して同級生の前に立つんです。そして先生がいなくても、自分たちだけでも授業を進めることができるという手応えを感じます。こういう意識改革が大切で、自分たちだけでもできることがわかると自信がつきます」

子どもたちが先生に代わってクラスメートに授業をする「自学・自習」
「自学・自習」の授業に向けて教員と準備をする子どもたち

先生役は学習係や、やりたいと立候補した児童が数人で解説・板書と役割を決めて行うが、内容は事前に先生と打ち合わせをして準備をする。学力的に高い子だからといってできるわけでもなく、誰でもやりたい子はできるようになるし、予想外の児童が思わぬ力を発揮することもあるという。

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