「買わずにいられない」精神状態に導く催眠商法 あの手この手で高齢者の「心」を奪い去る
ある日、コンビニの空き店舗に「健康食品」と書かれたのぼり旗が立つ。
閉め切った会場にはパイプいすが並び、続々と集まる高齢者たち。販売員の小話で盛り上がり、無料で洗剤やトイレットペーパー、おコメや卵など日用品や食品がもらえる。暇潰し、お土産目当てに通っていたはずの来場者が高額商品を買わされる。
会場の雰囲気で高齢者の判断能力を鈍らせ、商品を売りつける「催眠商法」の手口だ。国民生活センターが集計する相談者の支払金額は平均170万円に上り、「2カ月で500万円以上を契約した」という相談事例もある。
「普段は家族に冷たくされているお年寄りが、若い販売員に優しくされるとうれしいもの。孫のように販売員をかわいがり、期待に応えようと商品を買う人もいる」
2カ月ごとに各地を転々
そう明かすのは、実際に催眠商法に携わっていた男性(50歳)だ。男性は2002年に関西地方に本社を置く健康食品販売会社に入社。6年間販売員を務めた。2カ月ごとに各地を転々とする販売会場には、商品の魅力を伝えて会場を盛り上げる「講師」と、合いの手を入れて客と契約を取り付ける「アシスタント」の販売員がいた。
「帰りに無料で商品を配ると感謝してくれ、人当たりのいいおばあちゃんは、少し押せば財布を開く『見込み客』」だったという。
販売員の中には、高齢者から関心の高い健康の話題を振りまいたり、「母親をがんで亡くしている」と語って客の涙を誘う人もいた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら