「買わずにいられない」精神状態に導く催眠商法 あの手この手で高齢者の「心」を奪い去る

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「オレオレ詐欺」をはじめとする特殊詐欺の被害に遭うのは、大半が高齢者だ。なぜ高齢者が狙われるのか。4月3日発売の『週刊東洋経済』の特集「狙われる高齢者 喰い尽くされる親のカネ」では、高齢者が詐欺や悪徳商法に狙われる社会的構造と、加害者たちの実像に迫った。親の資産防衛マニュアルも収録。家族を被害から守るための完全保存版だ。

ある日、コンビニの空き店舗に「健康食品」と書かれたのぼり旗が立つ。

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閉め切った会場にはパイプいすが並び、続々と集まる高齢者たち。販売員の小話で盛り上がり、無料で洗剤やトイレットペーパー、おコメや卵など日用品や食品がもらえる。暇潰し、お土産目当てに通っていたはずの来場者が高額商品を買わされる。

会場の雰囲気で高齢者の判断能力を鈍らせ、商品を売りつける「催眠商法」の手口だ。国民生活センターが集計する相談者の支払金額は平均170万円に上り、「2カ月で500万円以上を契約した」という相談事例もある。

「普段は家族に冷たくされているお年寄りが、若い販売員に優しくされるとうれしいもの。孫のように販売員をかわいがり、期待に応えようと商品を買う人もいる」

2カ月ごとに各地を転々

そう明かすのは、実際に催眠商法に携わっていた男性(50歳)だ。男性は2002年に関西地方に本社を置く健康食品販売会社に入社。6年間販売員を務めた。2カ月ごとに各地を転々とする販売会場には、商品の魅力を伝えて会場を盛り上げる「講師」と、合いの手を入れて客と契約を取り付ける「アシスタント」の販売員がいた。

催眠商法の販売員をしていた男性と表彰状
20代後半に催眠商法の販売員をしていた男性(活動名はロバート・熊)。成績優秀者として社内で何度も表彰された。現在は関西の食品スーパーで働いている

「帰りに無料で商品を配ると感謝してくれ、人当たりのいいおばあちゃんは、少し押せば財布を開く『見込み客』」だったという。

販売員の中には、高齢者から関心の高い健康の話題を振りまいたり、「母親をがんで亡くしている」と語って客の涙を誘う人もいた。

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