うつ病、休職、自殺…同僚が自殺した学校現場で見たパワハラと「隠ぺい体質」 校長は「勤続」で責任不問、職員室は異様な静寂

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人間誰しも、愚痴を聞いてほしいときもあれば、喜びを分かち合いたいときもある。それは学校の教員も同じだ。つらい経験に共感したり、笑い話にほっこりしたり、はたまた、成功体験をシェアしたり――、そんな学校現場の知られざる「リアル」をお届けしていく。 今回お話をうかがったのは、勤務していた高校で同僚の自殺を経験した元教員の男性だ。原因は、校長による“パワハラ”だった。

【エピソード募集中】本連載「教員のリアル」では、学校現場の経験を語っていただける方を募集しております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームからご記入ください。
投稿者:若井 實(仮名)
年齢:50代
居住地:東京都
勤務先:高等学校(退職済み)

学校現場の「パワハラ」が起こした悲劇

2019年、労働施策総合推進法の改正によっていわゆる「パワハラ防止法」が成立し、22年4月からすべての事業者にパワハラ防止措置が義務づけられた。

これにより、文部科学省も教育委員会に対してハラスメント防止策の推進を求めているが、企業と同様、パワハラは学校現場でも以前から深刻な課題だった。

地方の公立高等学校で教員をしてきた若井實(仮名)さんは、現在は退職して実家のある東京へと戻ってきた。20年以上の教員生活の中で、同僚だった2人の教員の自殺とうつ病による退職を立て続けに経験した。原因は、「パワハラ」と「いじめ」だったと語る。

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(写真: bluet / PIXTA)

「2人の先生と私は、同じ学年を受け持つ“担任団”の間柄でした。2つの事件はいずれも同時期、立て続けに起きました。夏にK先生が自殺し、秋にA先生が休職。A先生は一度復帰しましたが、うつが再発して結局退職しました。パワハラを行ったのは、当時の校長です」

一度のミスから、一人の先生が命を絶った

若井さんの勤務校はとある公立高校。とくに悪い噂も聞かれない、至って普通の学校だった。

K先生とA先生は、事件の1年前に赴任してきた。2人とも初年度からクラス担任を受け持ったが、担任団として結束し無事に1年間を終えたという。

「翌年の春です。K先生は、学校の公式サイトに受験関連の情報をアップする役割を任されていました。理系の先生でしたし、コンピューターに強いと期待されていたからです。しかし、機器トラブルがあって規定時刻に掲載できなかった。私を含め、周りの先生は『災難だったね』という雰囲気でフォローをしましたが、一人、校長だけはK先生を許しませんでした。激高し、K先生を激しく叱責したのです」

「なぜこんなことになったんだ」「お前は駄目な奴だ」――。校長は普段から教員と親しくするタイプではなかったが、この時はとくに厳しくK先生をなじったという。

以降、公の場での叱責こそなかったが、校長のパワハラは続いていたのではないかと若井さんは感じている。K先生はその後も目に見えて病んでいったからだ。

「ブワッと帯状疱疹が出ていたこともありましたし、そうでなくても急激に太ったりやせたり、K先生の体型が激しく変化していたのを覚えています。私に『校長は僕を嫌っているんです』とこぼしたこともありました。心ここにあらずといった感じで、目の焦点も定まらなくて。『大丈夫か……?』と思っているうちにK先生は学校を休みがちになりました。そしてある日、事務員の方から連絡を受け、同僚と共にK先生の自宅へ駆けつけたんです」

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