公立中高一貫校の「国際バカロレア教育」、気になる「授業と進路選択」の実態 「札幌開成中等教育学校」卒業生にも聞いてみた
同校で6年間学んだ卒業生の数は、2020年度と21年度を合わせて計約300名。そのうちDPを履修した8名が、米国、英国、オーストラリア、台湾などの海外の大学に進学した。「ちょうどコロナ禍で海外渡航が制限され、進学を断念せざるをえないケースも少なくありませんでしたが、今後の社会状況によっては、海外大学を目指す生徒は増えると思います」と西村氏は話す。
こうした中、同校のDPを履修して卒業し、22年7月にオーストラリア有数の名門校であるメルボルン大学に進学した佐々木葵彩さんは、進路選択におけるDPのアドバンテージについて次のように語る。

(写真:佐々木さん提供)
「実は、私が海外大学を目指し始めたのは、高3の秋。それまでは国立大学の医学部に進もうと考えていたのですが、海外には合格すれば授業料が無料になる大学があると知り、進路を急きょ変えました。それができたのも、DPを取得していたから。今も自分が海外の大学にいることにびっくりしています。DPコースの仲間も、DPを生かして国内外の大学に進学した子がほとんどでしたね」
IB教育で得たものは、大学入学資格だけではない。佐々木さんは英語が好きで理系にも興味があったため、IB認定校かつSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)指定校の同校を志望し、16年に入学した。「英語は世界の情報ソースへのアクセスがしやすく多様な考え方に触れる機会が増える。もっと英語で勉強がしたい」と思い、DPに進んだという。確かに勉強はハードだったが、まったく苦ではなかったそうだ。
「札幌開成のIB授業は100分なので、振り返りや同級生との共有の時間まで十分取れるため、発展的かつ深い学びが定着しやすいと感じます。放課後に勉強することも多かったのですが、ほかの9人の仲間と課題を共有しながらの勉強だったため、むしろ帰りたくないくらい楽しかったですね。CASでも学校では得られない経験ができ、とくに幅広い世代の方々との交流は大きな刺激となりました」
また、IBを通じて鍛えられたスキルは今も大いに役立っていると佐々木さんは言う。
「6年間鍛えられた振り返りスキルや協働スキルには、日々支えられています。とくにスケジュールがハードだったDPの2年間で身に付いた自己管理スキルは、現在の体調管理や時間管理にすごく役立っています」

(写真:佐々木さん提供)
佐々木さんは現在、ヒューマンストラクチャー&ファンクションという、解剖学や生理学などを学ぶ学問を専攻している。「日本のダンサーを救う医師になりたいので医学の道に進みたいですが、大学に入ってみたら研究にも興味が湧いてきました」と語る姿からは、学ぶことが心から楽しいという気持ちが伝わってきた。