IB教育とは?
IB教育とは、スイスのジュネーブにある「国際バカロレア機構」がつくった教育システムで、正式名称は「International Baccalaureate」です。プログラムについては、未就学児〜高校生くらいの年齢が学べるように幅広く用意されていてそれぞれの発達段階に合った内容を学ぶことが可能です。例えば、3〜12歳のプログラムでは、精神・身体の発達を考慮したものとなっています。これは3〜12歳の年齢がかなり発達しやすく、重点的に指導することで成長しやすいからです。それに対して、16〜19歳くらいの年齢では、具体的に自分のキャリアを見据えた内容などをじっくりと学んでいきます。
IB教育の狙い
IB教育では、「国際的な視野を持つ人物」の育成に力を入れています。世界的に貢献できるようにさまざまな能力を身に付けるためです。
具体的に挙げている人物像は以下のとおりです。
・探究する人
・知識のある人・考える人
・コミュニケーションができる人
・信念をもつ人
・心を開く人
・思いやりのある人
・挑戦する人
・バランスのとれた人
・振り返りができる人
IB教育を受ける幼児・児童・生徒側
ではIB教育を受けると、どんなメリットやデメリットがあるといえるのでしょうか。以下で解説をしていきます。
IB教育を受ける幼児・児童・生徒側のメリット
まず、メリットとして挙げられるのは「学習が楽しくなる」ことです。
教科書の内容をただ行って学習していくだけでは、児童・生徒としても面白くないでしょう。しかし、IB教育では自分で考えて探究しながら進めていくことが多くなります。誰かから一方的に教わるわけではないため、勉強を楽しいと感じやすくなるのです。
また、IB教育は海外転勤などが多い人を見据えて作られたプログラムでもあるので、世界中で大学を受験することなども可能となります。
IB教育を受ける幼児・児童・生徒側のデメリット
デメリットとしては、日本であまり普及していないことが挙げられます。
IBの認可がされている学校はあるものの、例えば高等教育にあたるDPの認定を受けている学校は63校、その中でも約半数となる32校のみが日本語でのIBに対応しているといった状況で、日本の高校が約5,000校弱であることから鑑みればまだまだこれからという段階です。
とはいえIB教育に対する潜在ニーズはありますので、今後はさらに増えてくることが期待できるでしょう。
IB教育を指導する教員側
では、教員側にはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。以下で見ていきましょう。
教員がIB教育を指導するメリット
いちばんのメリットは質の高い教育ができるということです。
日本でも近年「主体的な学び」という形で、学習指導要領の中でもIB教育に近い言葉が使われることがあります。児童や生徒の考えを基に授業を作るのはかなり重要なことです。しかし授業ごとに目標などが異なっているため、何を頼りにして授業を進めてよいのかがわかりにくいことも多いでしょう。教科ごとの目標はあるものの、どういう人物に育ってほしいのかはわかりにくい部分でもあります。
その点IB教育では目標となる人物像が具体的に挙げられているので、授業が進めやすく、質の高い教育を行うことができます。
教員がIB教育を指導するデメリット
デメリットは児童や生徒のフォローが大変だということです。
しっかりと学習についてきている児童や生徒であればよいですが、つねに課題があって忙しい児童や生徒もいます。人によっては学習のモチベーションが下がってしまうことも考えられます。苦しすぎて泣き出す児童や生徒もいますので、そういった人を支えるだけのスキルが教員にも必要になるということです。
高等教育に相当するDP取得のためには、6教科のうち少なくとも3教科は難易度の高いハイレベルを選択する必要があり、他に課題論文や課外学習等もこなしていかなければなりません。そのため場合によっては教員の負担も大きいと感じるでしょう。
また、国によってはIB教育がマイナーなケースもありますので進め方に戸惑うこともあります。周囲に相談相手もいないので、教員自身も苦しくなって指導が嫌になってしまうケースも考えられるでしょう。
日本におけるIB教育
2022年時点で世界では約5,500校近くが、日本国内では59校が国際バカロレアの認定を受けています。実際に日本ではどのようにIB教育が導入されているのでしょうか。それぞれの年代ごとに確認していきたいと思います。
小学校におけるIB教育
基本的には精神面や身体面で大きく成長する時期であるため、バランスよく成長させることが目標です。小学生でもわかりやすいような、身の回りのことを題材にしながら授業を進めていきます。例えば、「私たちは誰なのか」「どんな時代を生きているのか」などのテーマで深く学んでいきます。教科ごとに視点を変えることや、学年が上がれば題材のレベルをあげるなどの工夫をすることで児童が学んだことを身に付けられるよう進めます。
中学校におけるIB教育
中学校では、概念にフォーカスした授業を多く行っていきます。
例えば、通常の授業であれば「欧州や米国の工業」などの内容を学ぶだけで終わってしまいます。しかし、IB教育では「工業って?」「具体的に発展するのはどんな地域?」など生徒たちが自分で調べながら探究する活動を多く行っていきます。
発表の機会なども多くなるため、生徒たちも表現力を多く身に付けることができるようになるのです。友達との関わり合いを通して、人間力を高めることもできます。
高校におけるIB教育
小・中学校でのIB教育とは違って、授業が難しくなってくるのが高校のIB教育です。基本的には日本語ではなく英語やフランス語などでの授業を受けなければならないため、言語面でもしっかりと学習を進めていく必要があるのです。2年間のカリキュラムがしっかりと決まっていて、受講して成績に問題がなければ大学への入学資格を得ることもできるようになります。
学費が高額になるケースもあるので、そのあたりは注意しておくべき点だと言えます。
大学におけるIB教育
キャリア教育を中心としたプログラムになります。日本ではまだ行われていませんが、今後導入されることも考えられるでしょう。具体的には、自分のキャリアに役立つと思われる科目を選択して進めていく形になります。勉強と一緒に職業体験(日本ではインターンシップなどが近い)などができるので、より効率的にスキルを身に付けることができます。
また、日本では入社後に研修などを通してビジネスマナーなどのスキルを身に付けることが一般的ですが、入社時にある程度のスキルを持っていることは魅力的だとされています。
まとめ
IB教育については、日本ではマイナーな部分もありわからないことも多いと思います。
しかし、魅力的で実践するメリットがあるといえるでしょう。