アクティブラーニングとは
アクティブラーニングとは、「能動的な学び」のことを指します。つまり、自分たちが主体となって学ぶことを意味します。
勉強をするというと、誰かから教わったり指導されたりすることを想像する人も多いのではないでしょうか。もちろん、そういった側面もありますが、調べ学習やディベートなどのように自分たちで学習を進めていくのがアクティブラーニングです。
アクティブラーニングの目的・背景
アクティブラーニングが導入された背景には、クリエーティブさを求められる時代になってきたことがあります。
以前は指示されたとおりに大量生産する仕事のスタイルが主流でした。しかし最近はAIやロボットの発達によって、人間より効率的に単純作業が行えるようになったのです。これから求められるのが自分で考えて新しいものを作っていく力だということもあり、アクティブラーニングが設定されました。
アクティブラーニングの種類、学習方法
では、実際にどのようにアクティブラーニングを進めていくのでしょうか。
詰め込み型の授業では教員が前に出て説明する機会が多くありましたが、アクティブラーニングの場合、基本的には教員は説明をしすぎずに一歩引いた目線で見ていくことが大切です。極端なケースだと、教員が1つの授業の中で2〜3回しか説明をしない場合もあります。しかし、児童・生徒がしっかりと活動しているのであればアクティブラーニングとしては成り立っています。
アクティブラーニングは生徒が自分から学ぶことですが、本来の学習内容からズレないことも大切です。この辺りは生徒自身の意識、教員側でもしっかりと児童・生徒を観察しつつ、適切なアドバイスを送っていくことが重要になってきます。
アクティブラーニングと新学習指導要領
アクティブラーニングの内容については、学習指導要領の中でも「主体的な学び」として書かれています。ですので、すべての教員が意識しながら取り組んでいくべき内容だといえます。
授業の流れとしても、以下のようなパターンが多くあります。
まずは、児童や生徒が疑問を持つ環境をつくります。例えば、空気より軽い気体を学ぶ場合は「風船が浮くのはなぜだろう」と問いを投げかけるなどして疑問を持つことを促します。
次に、児童や生徒から疑問が出た場合、教員がそれを拾って目標としていきます。
その後、実際に児童や生徒が自分たちで活動を行い、その疑問について実験やPCなどを使って調べられる環境を作ります。そして最後に振り返りを行い、自分たちの言葉で言語化します。
教科によって違うものの、おおむね上記のような形をベースにして教員が指導案を作ることは多くあります。
アクティブラーニングのメリット・デメリット
アクティブラーニングにはメリットとデメリットの両方があります。しっかりと理解をして、どう授業で実践していくのかは考えたほうがよいでしょう。
メリットとしては、より「深い学び」につながりやすいことがあります。やはり教師から話を聞くよりも、実際に自分で調べたり活動を行ったりしたほうが印象に残りやすいです。わかった時の感動も大きいでしょう。
また、シンプルに学習自体が楽しくなることも挙げられます。友達とコミュニケーションを取りながらさまざまなことに取り組むのは生徒にとっても興味を持ちやすい部分です。
反対にデメリットとしては、主体的に取り組めない児童・生徒もいるということです。
成績がよい子や、その教科が好きな児童・生徒であれば積極的に取り組んでくれるでしょう。しかし、自分から学習に向かうのが難しい児童・生徒にとってはアクティブラーニングが苦痛になってしまう可能性もあります。
アクティブラーニングの授業例
アクティブラーニングについては、TOKの手法なども使いながら行われているのが特徴です。TOKは国際バカロレアなどを中心とする「知の理論」のことです。
例えば道徳の場合は、具体的に登場人物が行ったことなどを挙げながらそれについてよい悪いなどを児童・生徒自身が考えられるようにしていきます。批判的な視点で見ていくのがTOKなので、基本的には授業の中でもたたき台などが出るような形になってきます。
アクティブラーニングの導入事例
では、アクティブラーニングはどんなふうに活用されているのでしょうか。小学校から大学までで実際に導入されている例を参考に見てみましょう。
小学生で哲学?固定概念のない子どもたちだからこそ生まれる発想から得られるものとは
哲学と聞くと難しく聞こえるかもしれませんが、例えば「人はなぜ生きるか」「大人と子どもの境目は」など、大人でも簡単には答えられないようなテーマをみんなで決めて話し合ってみるとします。このような問いは正解があるわけではなく、そこで出てくる多種多様な質問や、大人でもハッとさせられるような意見が出てきます。それによって「みんな違っても良いんだ」と気づくことができ、これまで自分に自信がなくなかなか意見を言えなかった子どもが積極的に手を挙げられるようになったりするということもあるかもしれません。
内容が社会科みたいな中学英語の授業
英語の授業といえば、教員やテープが教科書を読んで生徒がみんなでリピートする、というのが一般的でしょう。そんな中、例えば教師や自分達が何かテーマを決めた上で、グループに分かれて一つの内容について英語で議論する、といった授業を行う中学校があります。自分の知っている単語や文法を最大限生かして意見を言い合うことで、実際英語圏で生活する上で一番重要な英語でのコミュニケーション力を中学の3年間だけで身につけることができるかもしれません。
体育祭の審判や司会まで自分達でやり遂げる高校
体育祭といえば教師のアドバイスをもとにクラス一丸となって一つの目標に進む、というのを多くの人が想像すると思いますが、鷗友学園女子中学高等学校では当日のプログラムを決める人、司会をする人、審判をする人全てを生徒自らが行っています。勉強は得意でも運動がどうしても苦手な生徒は少なからずいるでしょう。そういう生徒たちでも何かやりがいを持って体育祭に取り組めることが特徴です。例えば、司会が好評だったことで将来はアナウンサーを目指す生徒があらわれるかもしれません。
大学授業は全てオンラインかつ原則アクティブラーニングの大学
例えば授業はすべてオンライン会議形式をとって、実際に直面している問題などをどうやって解決するかグループワークを通して話し合うとしましょう。答えが1つに絞れないものや全てを解決できる解はない問題の場合、学生たちは少しでも多くを解決できる案を考える必要があります。これはコロナ禍で実際に企業が実践している会議と同じようなことで、大学を卒業した時点で企業の即戦力になれる可能性があるわけです。
アクティブラーニングと教員の工夫
アクティブラーニングを実施しても、児童や生徒にただやらせるだけで終わってしまうケースもあります。それでは授業としては失敗といえるでしょう。
大切なのは、児童や生徒を見守りつつも大事なところでアドバイスする姿勢です。
教員側の工夫としては、児童や生徒側から出てくる意見や考えをある程度まとめておくことが大切です。それに近い意見を授業の中で生かすことで、大きく授業の方向がズレることはなくなってくるからです。
事前準備を工夫しておくことがとても重要だといえるでしょう。
まとめ
アクティブラーニングは少しずつ日本の学校でも取り入れられるようになってきましたが、主要科目とされる国語や算数などではまだまだ従来の授業方式がほとんどでしょう。今後少しずつアクティブラーニングを取り入れる学校が、1人でも多くの子どもが「学ぶって楽しい」と思えるようになる瞬間が生まれることを期待します。