記事の目次
学習指導案とは?
学習指導案の役割
学習指導案の作り方
学習指導案の構成要素を決める
学習指導案作成のポイント
学習指導案の具体例
まとめ

学習指導案とは?

学習指導案とは、授業において、授業者が生徒に伝えるべきことや進め方について具体的かつ詳細に記した学習指導の計画書のことです。年間指導計画書に基づいて、指導内容や学習活動、評価項目を記します。

授業をどのような学習形態で行い(グループワーク、調べ学習など)、どのような順序で指導し、またどのように生徒を評価するかについて、一定の形式にまとめたものといえます。

学習指導案の役割

学習指導案の役割としては、次の3つが挙げられます。

1:実際に授業を展開するうえでの進行表
先述したように、学習指導案は授業者が当該授業で伝えるべき内容を具体的かつ詳細に記した計画書です。指導案を基に授業を行うことで、ねらいに即した学習指導を効率的に進めることができます。

2:授業研究の資料
公開授業では、参観者に対して授業のねらいや工夫点など、授業者の意図を伝える必要があり、学習指導案はそのための資料としても役立ちます。生徒観や指導観など共通理解を図るためにも重要です。

3:授業の記録
授業終了後、振り返って生徒の反応や計画の成果、課題点を明らかにする授業記録としての役割もあります。この記録を基に考察することで授業の質を向上させ、ひいては学校全体の教育の質の維持・向上につながります。

学習指導案の作り方

では実際に学習指導案を作る場合、どのように進めていけばいいのでしょうか。順序立てて解説します。

テーマを決める

まずは教科書のどの単元で授業をするのかを決めます。年度初めに決定しているシラバスがあればそれに基づいて決めましょう。「教科書〇ページから〇ページ」のように具体的に記します。

時間や場所を設定する

授業の日時や場所について、「〇月〇日〇曜日 △限 〇年〇組教室」のように具体的に記します。

学習目標の設定に必要な情報を把握する

単元の学習の中で生徒にどのような力を身に付けさせたいのかという視点から、授業の目標を設定します。学習指導要領などを参考にしながら、そのために必要な情報を集めましょう。

学習指導案の構成要素を決める

学習指導案の構成要素は、校種や学年などによって変わってきますが、基本的には以下で構成されています。

1:単元名
2:単元設定の理由
(1) 教材観
(2) 生徒観
(3) 指導観 
3:単元の目標
4:単元の評価規準
5:単元の指導計画
6:本時案
(1) 目標
(2) 評価
(3) 展開

実施計画を立てる

構成要素の項目をまとめて、具体的な授業の実施計画を立てていきます。

学習指導案作成のポイント

学習指導案の形式はそれぞれの学校によって変わりますが、構成要素の中でも特に重要となるポイントがあります。具体的には以下のとおりです。

単元設定の理由

1:教材観
生徒観を踏まえ、単元の特徴、身に付けさせたい力について具体的に記します。また、既習単元との関連、その単元を取り上げることの意義や価値を明確にします。
2:生徒観
これまで生徒がどのような学習を行ってきたか、どのような実態なのかを踏まえてこの単元で身に付けさせたい力について授業者の立場で具体的に記します。
3:指導観
生徒観と教材観を踏まえた学習課題を克服するための具体的な指導・支援の方法を記します。また、指導形態や環境設定、主体的な学びに向けた指導上の工夫や方法を明確にします。

単元の目標

ここでは「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」、また、これらの力を育むために大きな原動力となるのが「学びに向かう力、人間性等」ですので、これらすべての内容を踏まえて記します。

単元の評価規準

単元の評価規準については、「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」を以下、参考例とします。

出典:「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(高等学校 家庭) 国立教育政策研究所教育課程研究センター

1:「知識・技能」
当該単元で育成を目指す知識および技能の指導事項の文末を「~している。」とします。
2:「思考・判断・表現」
当該単元で育成を目指す「思考力、判断力、表現力等」の指導事項の冒頭に,指導する1領域を「(領域名)において、」と明記し、文末を「~している。」とします。
3:「主体的に学習に取り組む態度」

以下の①から④の内容をすべて含め、単元の目標や学習内容等に応じて、その組み合わせを工夫し、文末は「~しようとしている。」とします。

① 粘り強さ「積極的に、進んで、粘り強く等」
② 自らの学習の調整「学習の見通しをもって、学習課題に沿って、今までの学習を生かして等」
③ 上の2観点において重点とする内容(とくに、粘り強さを発揮してほしい内容)
④ 当該単元の具体的な言語活動(自らの学習の調整が必要となる具体的な言語活動)

単元の指導計画

単元の評価規準を基に、単元全体の目標を何時間で達成させるのかを考え、1時間ごとに指導計画を作成していきます。各時間内で評価しなければと思いがちですが必ずしもそうではありません。評価よりも指導に重きを置き、評価する場合は1時間に1、2回とするようにしながら、単元全体についての計画を作成します。

本時案

1:目標
単元全体における本時の位置づけを踏まえて、何をどのように学ぶのか、適切で効果的な学習活動になるように生徒の立場で書きます。

2:評価
本時の学習活動において評価規準に合わせて評価の観点、方法を具体的に書きます。

3:展開
本時の学習活動で、指導、支援の意図、指導方法の工夫や手だてなど、留意することを具体的に書きます。

学習指導案の具体例

ここでは具体例として、高校国語科の本時の指導案を示します。

単元 説話『古今著聞集』「大江山」
本時の目標(2時間中の1時間目)

1:話の構成や展開を理解し、大意を把握することから細部の検討に至る読解の方法を身に付けさせる。

2:和泉式部、小式部内侍の話題を取り上げ、興味を持って話の展開を追えるようにする。

まとめ

慣れないうちは学習指導案を書くのも一苦労です。ただ、日々授業をこなしていくと自分なりの型や手順が決まってくるため、それを基にすることで学習指導案を効率よく書けるようになります。授業や自身の指導法を磨く手だてになりますので、自分なりに工夫しながら書いてみましょう。

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武田さゆり 国家資格キャリアコンサルタント 中学高校国語科教諭 学校図書館司書教諭

4年制大学卒業後、金融機関へ勤務し、出産と育児を経て、公立・私立の中学高校国語科・論文か非常勤講師として17年勤務。7校で教壇に立つ。現在は都内の私立女子校に勤務する現役教員。進路指導の中で、自分の将来が描けていない生徒が多く、幼少期からのキャリア教育の必要性を強く感じ、国家資格キャリアコンサルタントを取得。現在、親子それぞれの強みを発見しそれを伸ばすためのワークを開発中