記事の目次
教育基本法とは?
教育基本法の直近の改正
教育基本法 第1条~第5条
教育基本法 第6条~第10条
教育基本法 第2章 第11条~第15条
教育基本法 第16条~第18条
教育基本法以外の教育に関する法律
まとめ

教育基本法とは?

教育基本法とは、日本の教育に関する基本的な考えや教育制度に関する基本事項を定めた法律です。教育に関するさまざまな法令の運用や解釈の基準となる性格を持つことから「教育憲法」と呼ばれる場合もあります。

理念を強く宣言する教育基本法の前文において、「公共の精神」「伝統」は重要なキーワードです。「たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願う」としたうえで、この理想を実現するために教育を、公共の精神を尊ぶことや、伝統の継承などを通して推進するとしています。

教育基本法の直近の改正

2006(平成18)年に公布・施行された現行法は、1947(昭和22)年に制定された教育基本法(旧法)すべてを改正したものです。

教育基本法は前文と第1章から第4章までで構成されており、本則は18条。改正によって新設された条文は、第3条、第7条、第8条、第10条、第11条、第13条、第17条です。

教育基本法 第1条~第5条

(教育の目的)

教育基本法 第1章 教育の目的及び理念 第1条

教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

教育基本法第1条は教育の目的そのものを明記しています。

教育基本法 第1章 第2条(教育の目標)

教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
 一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
 二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
 三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
 四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
 五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

教育基本法第2条では、第1条の目的の実現のためにどうすればよいかについて、5つの教育目標をより詳しく掲げています。

教育基本法 第1章 第3条(生涯学習の理念)

国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

社会構造の変化に伴う、生涯学習の重要性を明示しています。

*生涯学習とは、生涯に行うあらゆる学習を指しています。学びの対象は、学校教育や社会教育、スポーツ、趣味などさまざまです。

教育基本法 第1章 第4条(教育の機会均等)

すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地(※)によって、教育上差別されない。

2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

※門地:家柄のこと

障害者に対する国と地方公共団体による教育支援の責任について明示しています。

教育基本法 第6条~第10条

教育基本法 第2章 教育の実施に関する基本 第5条(義務教育)

国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。

2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。

3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。

4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。

義務教育の目的や、それに対する国と地方公共団体の役割などを規定しています。

1947(昭和22)年に制定された旧法では義務教育期間が9年とされていましたが、現在の法では期間に関する言及をなくし、柔軟に対応できるようにしています。

教育基本法 第2章 第6条(学校教育)

法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。

学校教育では、規律を守り児童や生徒などが学習意欲を高めることが重要であると規定しています。

教育基本法 第2章 第7条(大学)

大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。

2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。

大学の基本的な役割について規定しています。

教育基本法 第2章 第8条(私立学校)

私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

国と地方公共団体による私立学校の振興などについて規定しています。

*私立学校の助成に関しては、これまで「私立学校法」と「私立学校振興助成法」が法的な根拠を提供していましたが、本条の文言は私学の立場をさらに強めています。私立学校の「重要な役割」を前提として認めたうえで、「その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない」として、国と自治体側の責務を定めています。

教育基本法 第2章 第9条(教員)

法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養(※)に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

教員の研究と修養(※)や、養成と研修の充実などについて規定しています。

※修養:人格を鍛錬すること

教育基本法 第2章 第10条(家庭教育)

父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

家庭教育の基本的な役割や公的な支援のあり方などを定めています。

*保護者の教育権が国に優先することを、国内法として初めて明示した条文です。

保護者の教育権に関しては、民法第820条にすでに定められています、本条の「保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」によってその優先的地位が確認されています。

教育基本法 第2章 第11条~第15条

教育基本法 第2章 第11条(幼児期の教育)

幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

幼児教育の重要性と、国や地方公共団体による振興について規定しています。

*本条は、保育所や幼稚園、公園や公民館などの公的施設、民間活動などに、積極的な支援が行われることを言っています。

教育基本法 第2章 第12条(社会教育)

個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。

2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。

第3条の「生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において」という文言について、社会教育の場合で述べたものです。図書館などの公共施設を誰でも利用できるよう努めることを国や地方自治体に求めています。

教育基本法 第2章 第13条(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)

学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。

教育における家庭と地域の連携の重要性について明示しています。学校だけでなく、家庭や地域の住人などに対して、教育上の連携を行うことを求めています。

教育基本法 第2章 第14条(政治教育)

良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。

2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

政治と教育の基本的関係を述べています。思想・良心の自由の原則から、私立学校を含めて「法律に定める学校」だけが政治教育その他政治的活動を禁じられています。

*法律に定める学校とは、学校教育法第1条に定める学校のことを指し、具体的には、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校および幼稚園をいいます。

教育基本法 第2章 第15条(宗教教育)

宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。

2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

宗教観に関して、「寛容の態度」「一般的な教養」「社会生活における地位」を尊重することを、教育上の最低基準としています。

教育基本法 第16条~第18条

教育基本法 第3 章 教育行政  第16条(教育行政)

教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。

3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。

4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

教育における国と地方公共団体の役割分担や財政措置について規定しています。

教育基本法 第3章 第17条(教育振興基本計画)

政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

2 地方公共団体は、前項の計画を参酌(※)し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

※参酌:比べて参考にすること

国が総合的な教育施策を立案するための根拠となる条文です。この条文によって、文部科学省は教育政策の主導権を得ることになりました。

教育基本法 第4 章 法令の制定   第18条

この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。

旧法から引き継いだもので、恣意的な官僚支配を防ぐためのものです。「必要な法令」は、不必要な法令に対する歯止めの意味も持っています。

教育基本法以外の教育に関する法律

日本国憲法

教育に関しては、第26条で「教育を受ける権利」を保障しています。1947年の学校教育法制定までは、教育勅語により教育の理念が示されていました。また、第23条では「学問の自由」も保障しています。

学校教育法

教育基本法に基づいて、憲法第26条の国民の教育を受ける権利を学校教育で保証するため、学校制度の基本を定めた法律です。1947年3月31日公布、同年4月1日施行。

地方公務員法

公立学校の教員は、「地方公務員」という身分であり「地方公務員法」が適用されることになります。また、「教育公務員」という身分でもあり、職業的性格の特殊性から「地方公務員法」と「教育公務員特例法」の2つの法律で服務などが規定されています。

学校法人および私立学校の教職員については、公務員法制の公立学校と異なり、一般企業の従業員と同様、労働基準法をはじめとした労働関係法令が全面的に適用されます。

そのため、各学校法人および私立学校においては、労働時間の客観的把握、36協定等必要な労使協定の締結、就業規則などの学内規程の整備や当該規程にのっとった運用など、労働関係法令に基づいた適切な労務管理が必要となります。

教育公務員特例法

公務員のうち教育を通じて国民全体に奉仕する教育公務員の職務とその責任の特殊性に基づき、教育公務員の任免、給与、分限、懲戒、服務および研修等について規定した法律です。

教育職員免許法

教育職員の免許状に関する基準を定め、教員の資質の保持と向上を図ることを目的とする法律です。

地方教育行政法

教育委員会の設置、市町村立学校の教職員の身分、学校運営協議会の設置など、自治体における教育行政の組織と運営に関する基本について定めた法律です。1956(昭和31)年施行。

私立学校法

私立学校法はその目的を「私立学校の特性にかんがみ、この自主性を重んじ、公共性を高めることによって、私立学校の健全な発達を図ること」(同法第1条)と定めています。

ただし、私立学校といえども公教育の一翼を担っている点においては国公立の学校と変 わりなく、「公の性質」(教育基本法第6条第1項)を有するものとされ、この観点から私立学校にも「公共性」が求められます。

まとめ

今回は教育基本法について、原文と概要をまとめて紹介しました。乳幼児期から始まり生涯学習として一生続けることができる「学び」「教育」とはそもそも何なのでしょうか。教育基本法に触れることで考えるきっかけとなるのではないでしょうか。

持続可能な社会づくりをしていくうえでも教育は欠かせない項目です(SDGsでは4番として規定されています)。それぞれの立場、ステークホルダーから教育について考えるきっかけとして、これからも一緒に学んでいきましょう。

 
清水 智(Shimizu Satoshi)
FREERIDE TEACHER (一社)エンターキー教育ICTコンサルタント

元東京都公立小学校主幹教諭。都内&小笠原諸島父島での小学校勤務から長野県白馬村へ移住。長野県内で小学校講師と白馬エリアを中心とした教育ICTのアドバイザーも務める。GEG Hakuba Valley 共同リーダー。