記事の目次
STEAM教育とは?
STEAM教育の歴史と目的
STEAM教育と文部科学省
STEAM教育を取り入れた事例
STEAM教育にお薦めの教材タイプ3選
STEAM教育と日本
STEAM教育とアメリカ
STEAM教育の必要性

STEAM教育とは?

STEAM(スティーム)教育とは、Science(科学)+Technology(技術)+Engineering(工学)+Mathematics(数学)にArts(芸術・教養)を加え、その頭文字を取った言葉です。2006年にアメリカの技術科教師ジョーゼット・ヤークマン氏によって提唱されています。

現在、AI(人工知能)が劇的に仕事や生活のあり方を変え、求められる人間の仕事は単純作業から独創的な創造性と高い生産性の業務へと変わりつつあります。将来どんな職業に就こうとも、このScience、Technology、Engineering、Mathematicsの教養が必要となり、人間の特徴である創造的な分野「Arts」を掛け合わせ、総合的に学ぶという教育です。

STEAM教育が提唱された背景の1つには、情報科学やテクノロジーの進化に伴い、これらに対応するすべての人への理数系の教育が急務となっていることが挙げられます。しかし、STEAM教育の本質は「自発性」「創造性」「問題解決能力」といった能力の育成で、必ずしも理数系の教育が目的ではありません。

STEAM教育の歴史と目的

STEAM教育の歴史

STEAM教育はもともとSTEM(ステム)教育から始まりました。

STEM(STEAM)教育とは、1990年代に国際競争力を高めるため科学技術人材の育成を目的とした教育政策として注目されてきたといわれています。

このSTEM教育が変化したものとしてSTEAM教育が生まれ、STEAM教育はアメリカのオバマ元大統領が演説で述べたことにより注目されました。

これをきっかけに多くの著名人が賛同し、STEM(STEAM)教育は世界に広がったのです。

STEAM教育の目的

5つの領域の知識・技術を関連づけ、社会の課題を解決できる人材の育成を目的としています。

STEM教育との違い

最初に始まったSTEM教育には、Artsが含まれていません。物を作る際には科学の知識や技術に加え、デザイン性も重要です。さらに、このArtsにはリベラルアーツ(教養)も含まれます。人間が生きていくうえでの根本的なものの考え方や見方、知識などを指しています。独創的かつ創造的な考え方と、教養を養うためにSTEMにAが加わったと考えられます。

STEAM教育と文部科学省

文部科学省では、「STEAM教育などの各教科等横断的な学習」について下記のように推進しています。

「AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日、文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ、さまざまな情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成が求められています。

文科省では、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でAを定義し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を推進しています」

引用:文部科学省「STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進」

STEAM教育を取り入れた事例

小学校での事例

国の「GIGAスクール構想」により、子どもたちは1人1台の端末を用いるようになり、オンラインでつながれるようになってきました。そのため先生が教材ファイルを共有し、また子どもたちが共同で書き込んだりすることも珍しくなくなってきました。

例えば国語の授業で習った海の魚の話を基に、タブレットなどのパネルに指で描いた魚の絵を泳がせるプログラムを作ったり、ロボット教材を使って街の問題解決を目指したりといった実践が行われています。

参考:
「子どもが描いた「絵が動く」今どき図工授業の斬新」
文部科学省「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」
経済産業省「『「未来の教室」プロジェクトから見たEdTechやSTEAM教育の課題』」

中学校での事例

中学校は理科・技術科・数学科・美術科をより専門的に学ぶ中で、それらを横断するような取り組みが行われています。例えばネットワーク技術を基に双方向通信を学び、それを活用した観測や計算、またはアート表現などを実践しています。先進的な環境においては、すでにVRゴーグルを使った古典場面の疑似体験なども実施しています。

高等学校での事例

高等学校においては、自ら問いを立てて自ら解決に向かうことを学んでいます。RESAS(地域経済分析システム)を基に探究学習を行うことや、経済産業省「未来の教室」実証事業などの後押しを受けてAI教材などからさまざまなICT利活用の促進、またはオンライン国際交流など、発展的な教育活動が行われています。

参考:
「経産省が「教育現場のDX」に超本気の納得理由」
「異色理事長「あえて女子校」STEAM教育に挑む理由」

大学での事例

今の大学生は多くがパソコンを使いこなし、それぞれの研究分野から発展した新しい分野の開拓などのほか、産業界とのジョイントプロジェクトなども進められています。

例えば東京工業大学は、ロンドン芸術大学と協力し、STEAM 教育を軸にした「科学技術とアート」による新領域構築に取り組んでいます。ここでは、科学技術が現代の「様式」や「モード(潮流)」の融合を提唱する「DEEP MODE」という、学生と社会人が参画する共同研究や研修を行っています。

参考:
日本経済団体連合会:「学びのイノベーション・プラットフォーム」
産業競争力懇談会:「社会で育てる STEAM 教育のプラットホーム構築」報告書

学校以外での取り組み事例

地域ICTクラブなど

全国各地で「少年少女発明クラブ」などが運営されており、また地域の有志エンジニアなどによる無料の地域ICTクラブも開かれています。中でも「CoderDojo」などは全国に200以上あります。

民間STEAM教室など

大手フランチャイズ、または地域の独立系のSTEAM民間教育も盛んです。「ラーニングセンター新浦安」などはアドラー心理学によるインクルーシブSTEAM教育で有名です。また、「LITALICOワンダー」や「アーテックエジソンアカデミー」はロボットの組み立てとプログラミングが行えることで注目を集めています。

自治体イベント

自治体などによるイベントやコンテストもかなり増えています。行政や外郭団体、また中には全国規模のイベントも開催されています。

STEAM教育にお薦めの教材タイプ3選

パズル型=コンピューターサイエンス教育ツール

パズルやステップアップ的に課題をクリアしながら、コンピューターサイエンスを学ぶタイプの教材です。

創造型=プログラミング教育ツール

画面上のキャラクターや実際のロボットを動かしながら、自由に創造的な学びを広げるタイプの教材です。

探究型=データ活用教育ツール

主体的に課題を設定し、情報や素材を集め、知的好奇心を満たしていくタイプの教材です。

STEAM教育と日本

日本のSTEAM教育では、関係する構成要素はほぼ整っています。

例えば、中学校での「数学」「理科」「技術・家庭」など、履修範囲は十分な水準をカバーしており、すでにプログラミングについても技術科で行われてきました。しかし、知識・技能の習得にとどまることも多く、「総合的な学習の時間」など教科横断として活用する、資質での遅れが指摘されてきたなどの課題もあります。

2003年PISAショックなども経て、GIGAスクール構想により小・中学校での1人1台ICTのプラットフォームが整ったことを受けてSTEAM教育は今後さらに深まっていくことが予想されます。ただし、最終的に大学受験、高校受験という評価軸があるため、多様的・総合的な活動がどこまで拡大できるかは未知数です。

STEAM教育とアメリカ

前半でも簡単に触れましたが、1990年代から科学教育に力を入れてきたアメリカでは、2001年にSTEM教育と呼び始めました。09年オバマ政権によって「革新への教育」キャンペーンが始まり、15年にはSTEM教育法としてコンピューターサイエンスも義務化され(2017年STEAM教育法に改正)、現在も広く教育現場で推進されています。

STEAM教育の必要性

STEAM教育とは、情報化社会・知識基盤社会を生き抜く21世紀型スキルを育む学びと言えます。そのため、イノベーションを創出するトップ人材、全産業のSTEAM化に対応できるミドル人材、そして全国民のSTEAMリテラシーの強化の総合的な施策が重要です。

全国民がSTEAMの知識・技能を身に付け社会的課題に取り組むためには、幼・保・小・中・高校段階からの教育強化、大学での全学的なSTEAM分野における教育強化、またシニアなども含めた地域でのSTEAM教育学習の場の強化が必要とされます。

つまりすべての国民が「変化に対応する力」を得るためのSTEAM教育なのです。

 
清水 智(Shimizu Satoshi)
FREERIDE TEACHER (一社)エンターキー教育ICTコンサルタント

元東京都公立小学校主幹教諭。都内&小笠原諸島父島での小学校勤務から長野県白馬村へ移住。長野県内で小学校講師と白馬エリアを中心とした教育ICTのアドバイザーも務める。GEG Hakuba Valley 共同リーダー