記事の目次
ICT支援員とは
ICT支援員は資格がいるのか?
ICT支援員に求められるスキルと職務内容
ICT支援員の求人
ICT支援員のやりがいと仕事の困難性
まとめ

ICT支援員とは

ICT支援員とは、教育におけるICTの活用が進む学校においてその活用を支援する役割を持った人材を指します。主な業務は「授業支援」「校務支援」「機器やネットワークなどの環境支援」「校内研修支援」などです。

このように教育におけるICTの活用が近年著しく進んできた背景にはいくつかの理由が挙げられます。

まず社会全体にインターネットが普及し、あらゆる側面でデジタル化にシフトしてきたことから、その活用能力を育成することが学校においても求められていること、そのうえでさらなる利用価値を高めた指導における効果が広く認められてきたことです。例えば、これまで紙面や黒板でのみしか表現できなかった内容が動画やアニメーションの活用によりわかりやすく解説できること、拡大表示などができて使い勝手のよいデジタル教科書、クラウド利用による児童生徒同士の情報共有、AIにおける個別最適化された学習など、挙げればきりがないほどその事例も蓄積されてきています。このほかに、教員が事務処理で活用する校務支援システムの普及も広まっており、学校のICT化はほぼすべての業務で進んでいるのが現状です。

一方で、ICTを活用して学校教育で展開していくには教師の能力が相当に求められますが、十分にスキルが備わっていないという課題があります。筆者は10年以上高校での教員を経験してきましたが、ICT活用におけるレベルに応じた授業展開や、校務分掌(授業以外の業務分担)における役割にも影響してくることがあり、ICTの活用が新たに教員に求められるスキルとして位置づけられてきたと感じます。

しかし、これらは教員個人の研鑽だけに責任を負わせることはできず、また教員が多忙であるために研修時間が確保できない学校組織の構造としての課題でもあるといえるでしょう。そこで学校としてその課題を解決するために重宝されているのが「ICT支援員」と呼ばれる人材なのです。

ICT支援員は資格がいるのか?

ICT支援員は教員と異なり必須な資格はありませんが、仕事に就く場合に一定のスキルをアピールするための資格があります。

例えば、ITCE教育情報化コーディネータ検定試験では「ICT支援員」「ICT支援員上級」の資格があり、アプリケーションソフトの活用スキルやネットワークの知識などのほかに、学校教育や学校組織における知識も問われるのが特徴的です。つまりICT支援員には技術スキルだけを求めているわけではなく、いかに教育活動に寄与できるかが求められている点で重要なのです。

ICT支援員の資格取得のための勉強方法や試験内容とは?

資格試験は、「A領域:実践的知識」「B領域:問題分析・説明力」が実施されます。A領域はCBTによる会場試験ですが、B領域は試験実施日から5日後に課題が提示され、課題に対する動画を5日以内に提出するというものです。A領域は以下の領域等から出題がされるようです。

勉強法は実施団体における他の試験(教育情報化コーディネータ3級)の過去問題集が販売されています。また、実施団体におけるeラーニング「ICT支援員養成講座」も実施されていて、試験対策の1つになるでしょう。B領域は、教育現場で発生する問題解決や、技術的な内容を説明するといった内容の動画作成の課題が出されるようです。こちらもeラーニングが1つの準備にはなりますが、これだけでは十分ではなく、他人にわかりやすく説明する技術等をトレーニングする必要があるでしょう。

ICT支援員に求められるスキルと職務内容

ICT支援員の求人において、多くは特別に高いスキルは要求されるものではありませんが、勤務を通して学ばなければならないことは多いです。例えば、プログラミング教育の支援の際に、高度なコーディングスキルが求められることはありません。ただし、Viscuit(ビスケット)やScratch(スクラッチ)などのビジュアルプログラミング(プログラムを記述するのでなく、視覚的に理解しやすいアイコンやブロックを組み合わせて行うプログラミング)の支援の場合には、アプリケーションソフトの操作方法や、活用方法の理解が求められるため、習得しておく必要があります。

実際の授業では児童・生徒全員がコンピュータを扱っている場面におけるティーチングアシスタントとして支援に入ることがあります。児童・生徒それぞれが個別に扱っているためトラブルが発生する場面が多く、ここで支援の必要性が高くなるケースが多いのです。1人の教員が授業を進めながら個々のトラブルに対応することは難しいため、ICT支援員の存在は大きいということです。

これ以外にも、校務におけるOfficeソフトの操作支援や、新たに導入されるアプリケーションソフトの研修講師など多岐にわたる業務があり、教師にとってその存在の必要性が年々高まってきています。

ICT支援員の1日

ICT支援員Aさんはある自治体の小中学校でICT支援を行っています。ある小学校での日を紹介します。

ICT支援員の求人

ICT支援員に限ったことではなく、学校の人材採用は公立と私立で異なります。

公立学校では、設置者である自治体の市町村や都道府県による採用になります。また、私立学校の設置者は学校法人のため学校独自での採用です。

このとき、直接自治体もしくは学校と個人が契約するケースもありますが、委託業者が仲介するケースもあります。委託業者が仲介する際の特徴は、学校現場に派遣される前に研修があったり、派遣後も困ったときヘルプデスクに相談できたりするなど、一定の委託業者のサポートがあるために働きやすさにつながっている点が挙げられます。

また、直接自治体と契約する際も、提携しているIT事業者から支援を受けられる場合もあるようですが、自治体によって対応がさまざまです。

雇用形態については多様ですので、一部の情報しか提示できませんが、検索型情報サイトIndeedではフルタイムとパートタイムそれぞれあり、非正規雇用が少なくないようです。

その中でも委託業者における公募が多いようです。

ICT支援員のやりがいと仕事の困難性

一般的に、ITスキルを必要とする職においてはデスクワークが多く、フィールドワークもある職種は珍しいです。こうしたことから、直接教師や児童・生徒と触れ合い、目的が達成された際に感謝されることや、子どもたちの喜びを近くで見られることにやりがいを感じることが多いようです。

一方で、学校という企業とは大きく異なる職場において、仕事に慣れるまでに多くの時間がかかり困難を抱えるケースもあります。例えば、タイムスケジュールが想像以上に厳密であることで肉体的疲労が多いことや、教師が通常用いる専門用語の意味がわからず会話がうまく通じないことなどです。

ICT支援員は1校に複数人配置されることはあまりなく、時に孤独を感じる立場となってしまうため、そのような人材が抱える困難性について、配慮を持って対応することが今後の課題の1つになるでしょう。

まとめ

ICT支援員は、ICT化が促進される学校において多忙な教師たちが十分にテクノロジーを用いて充実した教育を日常的に展開するうえで必要な存在であり、全国的にその普及が広まっています。一方、とても重要な立場ですが、あくまで「支援員」という立場を活用する学校においては学校のICT化の中核を任せることはできず、その点からも教師のICTスキルアップは継続的に必要です。今後も教師とICT支援員の協働をどのように充実させていくかという学校運営の工夫が求められます。

 
保坂 英之 株式会社ぱんぷきんラボ代表兼現役教員

14年間、教員兼務にてシステム開発を行ってきた経験を生かし、2021年にぱんぷきんラボを創業し、学校向けの校務支援システム開発やデータ分析におけるコンサルティングを行う事業を手がけている。また、現場の知見を重要視しているため継続して教員業にも従事している。